大同特殊鋼では、787に使用されるエンジンのシャフトの素材をGE向けにも、ロールスロイス向けにも製造している。ライバル同士の仕事が集まることの意味は明らかである。

 素材と言えば、ボーイング787の開発以降、航空機の機体軽量化で日本の炭素繊維が活躍していることは知られている。

 航空機に用いられるレベルの炭素繊維では日本の3社(東レ、東邦テナックス、三菱レイヨン)のシェアは7割である。炭素繊維は、ジェットエンジンの性能向上にも貢献している。

 旅客機用ジェットエンジンのファンは、チタンで作られてきた。チタンはアルミ合金よりも強度があるため、特に強度が必要な部分に用いられてきた。チタンの比重は4.5で鉄の比重7に比べれば軽いが、アルミ合金の比重2.7よりは重い。

 炭素繊維複合材の比重は2を下回り、チタンを炭素繊維複合材に置き換えれば、大幅な軽量化を達成できる。

 チタン製のファンの周りにはチタン製ファンが外れても、飛散したファンが客室に飛んでいかないようファンケースという頑丈な覆いで囲う。ファンがチタンの場合、ファンケースもチタンである。

 大型エンジンでは直径3メートルを超え、ファンケースはファンよりも重い。このファンとファンケースを炭素繊維複合材で置き換えることで、何百キログラム単位の軽量化が可能である。

 軽量化だけでなく、炭素繊維複合材を使用することによる形状の自由度が大きくなったことで、ファンの効率も良くなっている。

図4 日本航空の787のエンジン。黒い炭素繊維複合材製のファンが見える。

 かつて、ジェットエンジンのファンを前から覗き込むと、金属のファンが見えた。近年では、炭素繊維を用いた黒いファンが増えてきている。

 これは、ジェットエンジン性能向上への日本の貢献が目に見える部分である。

 ジェットエンジン部品を作るのに、森精機、ヤマザキマザック、オークマ、牧野フライスなどの工作機械が欠かせない。

 日本のジェットエンジン部品を作るメーカーがこうした日本の工作機械を使用しているに留まらず、GE、プラットアンドホイットニー、ロールスロイスも日本製工作機械を使う。これらの工場の写真を見ると、日本メーカーの工作機械が写っていることがある。