月がレモン形をしている謎、ついに解明か

モロッコの首都ラバト(Rabat)で撮影された満月(2014年7月13日撮影)。(c)AFP/FADEL SENNA〔AFPBB News

 国際関係から対人関係に至るまで人間社会の各種活動において非対称な状態が許容限度を超えると非常に危険な状態になる。

 唐突にこのような“非対称”などと言う聞き慣れない用語を人文社会系の世界に使うと“奇異に感じられる”と思うので少し補足説明をする。

 個人的な人間関係、例えば2人だけの利害関係や家庭生活などの小さなコミュニティにおいて、上下関係や対等な関係(対称性)が保たれると大抵の場合、平穏で大きな混乱が生じることは少ない。

 しかしながらここにもう1人以上が加わるとその関係は複雑になる。一般的に、三つ巴と言われるように混沌とした抗争の生じることが多い。

 特に力関係が拮抗した3者以上のコミュニティで利害が絡む場合や男女関係、いわゆる世に言う三角関係となると非常に不安定で悲惨な結末を迎えることさえある。

 このような小規模コミュニティと同様、非対称な形態が国際政治の世界に生じると、これが原因で不安定な状態になる場合が多いのではないだろうか?

 もし、そのようなメカニズムによって危険が迫り来るとすれば、それを回避するため“非対称性”に陥らない工夫や対策が考えられるのではないかと私は考えるようになった。

対称と非対称について

 私は博士前期課程学生の頃、弾性表面波の研究をしていて、固体表面に波を立てて信号処理するテーマに取り組んでいた。

 詳細は省くが、固体表面に波を励起する(起こす)と、生じた波が(水面の波紋のように)点対称に伝わって行くことは万人が理解している物理現象である。

 しかし、私の研究は長方形の板の幅いっぱいに表面を伝搬する波を利用していた。この場合、発生した波の一方は信号として必要であるが、反対方向に生じる波は不要な雑音になってしまう。

 そのためそれを音波吸収体で除去していた。加えて、波を双方向に放射するため、エネルギー効率が半分になるという不都合な損失もあった。

 そこで、何とかして励起する波を信号処理に必要な「一方向だけに励起させることができないか」と考えた。

 「励起する波はなぜ両方向に拡がってしまうのだろう?」そして「何か一方向に波を励起させる類似のメカニズムで参考になるものはないか?」・・・。来る日も来る日も考え続けた。

 そして辿り着いたのが、3相交流モーターの原理である。3相交流モーターは簡素な構造で非常に効率良く回転力を発生し、しかも、左右に回転方向を切り替えることができると言う非対称性がミソだ。

 この3相交流の原理に着目して高周波の波動を固体表面で励起させることに取り組んだ結果、苦心惨憺したが、ついに実験的に弾性表面波の一方向励起に成功した。

 残念ながら、私がこの実験に成功したちょうどその頃に、全く同じ分野で同じ原理の提案が米国テキサスインスツルメンツの研究者から論文*1として既に投稿されていた(その約半年後に発行された論文誌の中からそれを見つけた)。

 少し後塵を拝することになったが、実験的に実証していた(基本原理を除く)部分をまとめて直ちに論文誌に投稿したところ、その新規性は認められて採録*2された。