2018年6月2日に東京・下北沢の書店「本屋B&B」で「[京極夏彦×装丁夜話]京極夏彦の版面」というイベントが開催された。このイベントを企画したのは、装丁家の折原カズヒロさんと坂野公一さん。今回は、坂野さんがこれまでに何冊もの装丁を手掛けた作家京極夏彦さんを呼んで、版面(はんめん、はんづら)づくりの詳細を語ってもらった。

 今回はその後編である。

前編はこちら
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53511

ルビを振る基準のマニュアルを作成

 版面をパッと見たときに、ルビの存在はかなり大きなウェイトを占めていることがわかります。傍点よりも存在感があるわけで。難読漢字には比較的画数の多い漢字が多いです。画数の多い漢字の横にルビがあるかないかは、大きな問題になります。

 さらに、ルビには位置の問題があります。肩付き、中付き、3字ルビ(1文字の漢字に3文字のルビが付くこと)で上下に漢字があったらどうするか、文頭文末でどうするか。ルビが天に付いている(漢字の上端とルビの上端をあわせる)のか、中に付いている(漢字の中央とルビの中央をあわせる)のかで、ずいぶん印象が違う。ところがルビの振り方は、どの出版社にも明確な基準がないんですよ。

写真 「京極ルビ基準」を説明する京極氏

 入稿スタイルを変えてからは自分でルビを振らなければいけないので、数名の有識者の知恵を借りて「京極ルビ基準」という何ページにもわたるマニュアルを作りました(写真)。ルビと親文字の組み合わせはかなり複雑で、イレギュラーなことも少なからずある。だから全部に対応できるわけではないんですが。もちろん、出版社側に基準がある場合はそちらを優先させます。

(*配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53512