DRAM価格高騰の直撃を受けているのは中国

 中国には、「世界の工場」と言われるようになった従業員数130万人を擁するホンハイ(鴻海)の巨大な組み立て工場がある。ホンハイは、世界の9割に及ぶPC、スマホ、各種デジタル家電、サーバーなどを組み立てているため、大量の半導体が必要である。

 現在、中国は“ホンハイ効果”により、世界の半導体の60%を消費している。といっても、中国国内で製造できる半導体は高々十数%に過ぎないため、80%以上を輸入に頼っている。その結果、中国では、原油を抜いて、半導体が貿易赤字の最大の元凶になってしまった。

 その元凶の一翼を担っているのが、DRAMである。何しろ中国は現在、DRAMを1個もつくることができない。それゆえ、輸入するしかない。だが、DRAM価格は1年半で3倍以上になり、価格高騰が止まらないのである。

 このような背景事情もあって、中国当局が、米韓DRAM企業3社に対して競争法(日本の独禁法)違反の調査を開始した。もし、違反が認定された場合、韓国企業には最大8兆ウオン(約8247憶円)もの課徴金が課せられるという(電子デバイス新聞2018年6月30日)。当然、マイクロンにもそれ相当の課徴金が課せられることになる。

 しかし、前節で述べたように、DRAM大手3社は密談により談合を行っていたわけではない。したがって、中国当局がいくら念入りに調査しても談合の証拠を見つけることはできないだろう。

 では、なぜ、中国当局は、シェア1位のサムスン電子や同2位のSKハイニックスではなく、マイクロンに生産・販売差し止めを命じたのだろうか?

中国が巨大メモリ工場を立ち上げ中

 中国では、習近平国家主席肝いりの産業政策「中国製造2025」を制定した。その1丁目1番地には、「中国半導体産業の強化」がある。2014年に立ち上げた中国IC基金は18兆円に増額され、この資金を投じて中国国内に半導体の巨大工場が立ち上がりつつある。