3つの基準を用いるのはどれも一長一短があり、「それがすべて」とは言えないためだ。

 たとえば、営業における「売上」が象徴的なように、「実績」は事実として最も分かりやすいという長所がある。アイリスオーヤマでは、部門ごとに実績指標を決めるとともに、数値化を進めている。開発部門は製品化の実績やその後の売上、物流・製造部門は作業品質(ミスの少なさ、在庫管理の精度など)や作業効率といった具合だ。こうした誰の目にも明らかな事実要素は、評価者に大きく依存することがないので、「売上を上げているのにまったく評価されない」「あの人はミスが多いのに評価が高すぎる」といった不満は生じにくくなるだろう。

 一方で、「実績」は環境要因に影響される側面もある。たとえば、営業担当者の売上も、担当する商品や得意先、景気、さらには上司の方針など、自身の努力以外の要素で大きく変わることも多い。そのため誰の目にも明らかな「実績」も、評価全体の部分的要素にとどめているというわけだ。

アイリスオーヤマ 執行役員・人事部部長の倉茂基一氏

「能力」を公平に評価するには?

 2つ目の基準は「能力」だ。能力は「上司次第で不公平」と受け取られがちな評価項目だ。その点を考慮し、アイリスオーヤマの「能力」評価は上司1人ではなく複数のメンバーで構成する「人事評価委員会」が行っている。

 人事評価委員会の構成メンバーは役職により変わる。たとえば、幹部社員(リーダー職以上の社員)に対する評価メンバーは、部門長や役員クラスを合わせて10人程度にもなる。自分が所属しない部門の部門長からも評価されることがポイントだ。