究極の時短料理? 群馬に伝わる「おっきりこみ」

製糸業や農業の多忙で広まった郷土料理

2018.07.06(Fri) 佐藤 成美
筆者プロフィール&コラム概要

 おっきりこみをピーアールするショートフィルムも作成した。ユーチューバーである留学生「リタ」が群馬県を訪れ、群馬県の名物を紹介するというストーリーで、民家でおっきりこみを紹介するニュースあり、割烹着の主婦らと踊るCMありと、ユニークだ。

群馬県のプロモーション映像「GNN GUNMA News Network」のおっきりこみ編。ルーマニア人ユーチューバーの「リタ」がおっきりこみを体験。(画像提供:群馬県ぐんまちゃんねる)

 さらに、県内のセブン-イレブンでは冬季に「群馬名物!上州地粉のおっきりこみ」が販売されている。「懐かしい味」と売り上げは伸び、販売期間を延長するほどだった。

ほっとする味こそ日常食

 おっきりこみをさっそく食べてみたいと思ったが、家庭料理なので提供している店は少ない。セブン-イレブンでの販売も、もう終わってしまったようだ。

 そうした中、セブン-イレブンで「すいとん」を見つけた。すいとんは、小麦粉をこねたものをちぎって野菜とともに煮込んだもの。おっきりこみと同様に日常食として群馬県や埼玉県北部などで食べられている。「他県の人がすいとんは戦時中の食べ物だと言っていたのに驚いた」との声があったように、こちらも今なお頻繁に食べられている。地域によって「おつみ」「つみっこ」「ねじっこだんご」などと呼び名は変わる。おっきりこみよりは作るのが簡単なので、ちょっとお腹がすいた、ご飯が物足りないというときに作るようだ。

 豚肉や白菜、にんじん、しめじなどの具材とともに小麦粉をこねたものが入っている。醤油ベースの味噌味というところだろうか。特別変わった具材でも、味付けではないが、どこか食べ慣れたほっとする味だった。これが日常の食というものなのだろう。

 おっきりこみから、粉食を常食する文化が地域に根付いていることを知った。地域で引き継がれてきた食べ物の背景をたどると、その土地の気候や風土が見えてくる。身の回りには、決して有名ではないけれど、その土地に根ざした食べ物があるはずだ。身近な食を見直してみたい。

いかがでしたか?
JBpress をブックマークしましょう!
Twitterで @JBpress をフォローしましょう!
Facebookページ に「いいね」お願いします!

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。


食の万華鏡

食の安全に対して国民の関心が高まっている。今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。食の安全の話題を中心に、食トレンド、食品マーケットなど、食にまつわる様々なテーマを取り上げる。