筆者が検討を勧めたい副業は、勤務先の業種・業界とできるだけ離れている仕事です。たとえば、卓越した英語力を持つ金融機関のIR(株主向け広報)担当者なら、金融・経済の翻訳・通訳ではなく、観光業や自治体のインバウンド向け英文資料の制作などです。

 主たる勤務先に近い業界ほど、副業を得るチャンスは増えるかもしれませんが「共倒れ」の危険性もあります。リスクマネジメントの観点からも、最初は遠い業種からトライしてはどうでしょうか。

地元密着型で新たな価値が見つかることも

 もうひとつ加えるなら、いま暮らしている町や郷里など、地元密着型の副業もお薦めです。他人やコミュニティの役に立つという喜び(やりがい)が分かりやすいし、自分で気づかない自分の強みや特技が見つかって、それが収益に結びつくこともあります。

 とくに地方で目立つケースですが、実家が持つ休耕畑を市民農園に再生して家族みんなで農作業を指導したり、パソコンやインターネット、スマートフォンの「よろず相談屋さん」をやったり・・・。若いときからの趣味である車・オートバイ修理やオーディオいじりでたまった部品をネットオークションで売買したら、思ったより大きな収入を得たという人も筆者も周りにいます。

 副業選びというと難しく感じますが、就業後や休日に地元の友人やコミュニティでいつもやっていることが、実は収入源になることも十分にあり得ます。人生100年時代の資産形成として最も大事な「長く働く」という意味では、小さく生んで大きく育つ可能性がある地元密着型の仕事は、すぐにでも始めてみる価値があると思います。

ビジネスではなく「商売」で見つける副業

 国や企業(勤務先)が副業・兼業を促進することは大いに歓迎すべきことですが、モデルケース通りに働く必要はありません。地域密着の小さなコミュニティで長く働き、身近な人たちに喜ばれながら収入を得ることは今後の大きな楽しみでもあります。まずは、自分の仕事や働き方、能力を「棚卸し」することから始めてみてはどうでしょうか。

 副業は「ビジネス」ではなく「商売」で考えると分かりやすいようです。私たちビジネスピープルに染み付いた「グローバル化」「市場の成長性」「マネタイズ」などの言葉は少し横に置いてみる。少額な報酬に対して、それをちょっと超えた質の仕事を繰り返すことで喜ばれる自分の特技や強みは何でしょうか。これが、中長期で安定的な収益が期待できる充実した副業を見つけるコツかもしれません。