小さなイノベーションが日常的に起きる組織作り

 イノベーションというと、誰も気が付かなった価値を創造し社会を一変させてしまうようなものをイメージしがちだ。しかしこのような大きいなインパクトをもつものが頻繁に起きるわけではない。

 私たちが注目するのはそういう大きなイノベーションだけではなく、日常的にあちこちで起きる小さなイノベーションである。

 例えば、メーカーの管理部門でエクセルのマクロで処理していたものを、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)に置き換えた。それによって処理機能が各段に上がったというようなケースだ。

 要は日々の仕事のなかで、新しい組み合わせや発想によって、面白いもの役に立つもの、仕事のプロセスが非常にスマートになるものを生み出すことも、日常的なイノベーションなのである。

 誰もがイノベーションを起こせる組織の特徴を5つ挙げよう。

・トライアンドエラーを尊ぶ組織
 失敗を恐れず、どんどん新しいチャレンジをする。万が一失敗しても、責められることがないので、ダメだったら次に挑戦しようとなる。

・セレンディピティ
 日本語で「うれしい偶然」という意味のこと。例えば、決まった人と決まった時間・場所でしかコミュニケーションできない組織、一方では縦横無尽にいろいろな人とコミュニケーションできる組織では、どちらがうれしい偶然が起きやすいかは一目瞭然だ。組織内外での交流がさかんな風土を作っていくことが重要なのである。

・エンゲージメント
 仕事に対する思い、モチベ―ションは重要。知識創造プロセスの提唱者として知られる野中郁次郎氏が提唱した知識創造のモデル「SECIモデル」通りにやればイノベーションが起きるわけではない。イノベーションを生み出すのは、新しいものを生み出したい、世の中の役に立ちたい、面白いものを作りたい、というやむにやまれぬ思いが起点であると野中氏も述べている。そういう思いを表出できるような、明るく元気な組織を作ることが重要だ。

・原石のアイデアを皆で磨き上げる
 どの組織でも、最初からものすごいアイデアが出るわけではない。ただ、そのアイデアは宝石であれば原石かもしれない。アイデアに興味関心を持ち、面白がり、リスペクトし、みんなで寄ってたかって磨き上げよう。

・クイックヒットしやすい環境
 いきなりホームランは無理でも、一塁打を少しずつ打っていく「クイックヒット」しやすい環境を作ることも大切だ。それが1つの動きになってくると、大きなビジョンに対してみんなの求心力が集まってくるからだ。