すぐに対応できる企業はごく一部

 すぐに「増員」に踏み切れる企業などごく一部だ。

 これまで「時間外手当」を重要な収入源としてきた労働者からは、「実質的な手取り収入が大幅減となる」という不満も強い。

 バス会社からは、「ただでさえ運転手の募集に苦労しているのに、急に増やすことなど不可能だ」という悲鳴が聞こえる。

 企業も労働者も「労働時間」の規定があいまいな点にも不安を感じている。

 「出張に行った際、どこまでが労働時間か」

 「接待のために夜の会食に出た場合、労働時間なのか」

 「休日を利用した会社の行事はどうなるのか」

 今回の「労働時間短縮」の対象者から外れるのは「管理、監督もしくは秘密を取り扱う者」だ。一般的には「部長級」以上は対象外だが、「では、部長をどんどん増やせばよいのか?」とまじめに考えている経営者もいる。

 こうした不満噴出を受けて、韓国の経営者団体である「韓国経営者総協会(経総)」が6月19日、政府に「6カ月の猶予」を求める建議書を出した。

 李洛淵首相は、政府としてこれを受け入れた形だ。

 法改正の施行は7月1日とするが、取り締まり、罰則などは猶予して「周知期間」とし、必要な措置を政府が取るということだ。