戦後の栄養不足を救ってきた油で揚げた「ごちそう」

「栄養と料理カード」でたどる昭和レシピ(6)天ぷら

2018.06.22(Fri) 三保谷 智子
筆者プロフィール&コラム概要

たっぷりの油で最低2分間は揚げる――昭和47年

1972(昭和47)年10月号。
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 1972(昭和47)年のカードにも天ぷらが登場する。ここまで紹介した2枚のカードと、材料も作り方も同様。1人分のたねの重量は125gほど。材料は、食べやすく火が通りやすいように下ごしらえをする。イカなど水分の多い材料は、表面の水気をよく拭き取ってから小麦粉をまぶし、衣をつけるとよい。

 たっぷりの油を180℃に熱し、材料を油に入れたら火力を調節しながら、適当な揚げ具合になるまで揚げる。裏返すのは衣の表面がやや固まってから。泡が小さくなったら揚げ上がり。油をよく切って揚げ物バットに重ならないように並べる。

1972(昭和47)年10月号。揚げ物の衣3種を紹介。
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 芝エビと三つ葉のかき揚げがあるが、その解説がないのは、当時の人は手慣れていたからだろうか。コツの箇所に「かき揚げの衣はうすいとまとまらない」と一文だけ。下ごしらえした芝エビと三つ葉は固めの衣にくぐらせて1個分ずつスプーンや木べらに取ってまとめ、静かに揚げ油に入れる。筆者には、それぞれのたねが油の中で散らばり、閉口した経験がある。

 改めて料理の基本として、同号に掲載の揚げ物の衣3種、つまり「和風」の天ぷら、「華風」の華風衣揚げ、「洋風」のベニエ(フリッター)を比べて表で示している。和洋中それぞれの特徴や衣のとき方、コツが一覧に。写真からは天ぷらの衣の固さと、揚げるときの温度180℃の様子が分かる。

総菜を買うのもいいが少量天ぷらを作っては

 紹介した3枚の天ぷらのカードでのたねは、キス、エビ、イカ、アナゴ、さやいんげん、かぼちゃ、にんじん、れんこん、ししとうがらし、三つ葉、穂じそ、筆しょうがなど。これらの材料をそろえるのは経済的にも大変。ごちそうの日の天ぷらだ。

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三保谷智子(みほやともこ)

栄養と料理』元編集長。2011年4月から香川昇三・綾記念展示室勤務。学芸員。

東京都出身。1977年立教大学文学部史学科卒業後、香川栄養専門学校栄養士科(現 香川調理製菓専門学校)へ進学、「栄養士」の資格を取得。その後、1979年女子栄養大学出版部雑誌編集課に入職、約30年『栄養と料理』の編集に携わる。1988年より2011年まで、10年間編集長を務める。途中、同部マーケティング課、書籍編集課に在席。

独立行政法人国立健康・栄養研究所外部評価委員。「食生活ジャーナリストの会」会員、NPO法人「野菜と文化のフォーラム」会員、NPO法人「くらしとバイオプラザ21」理事。現在、『栄養と料理』で連載「レシピの変遷シリーズ」を執筆中。


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