戦後の栄養不足を救ってきた油で揚げた「ごちそう」

「栄養と料理カード」でたどる昭和レシピ(6)天ぷら

2018.06.22(Fri) 三保谷 智子
筆者プロフィール&コラム概要

 脂肪は1gあたり9kcal(タンパク質・糖質は1gあたり4kcal)で、必須脂肪酸が摂れるのはもちろんのこと、食事のかさが少なくて効率よくエネルギーが摂れ、脂溶性のビタミン(ビタミンA・Eなど)の吸収をよくする。こうしたことから、栄養状態がよくない時代の食べ方として、油の効用を再三、企画として取り上げていた。

「栄養と料理カード」に天ぷらが登場するのは、戦後8年が経った1953(昭和28)年7月号だ。

材料、作り方、器具のすべてを紹介――昭和28年

1953(昭和28)年7月号の「栄養と料理カード」。この号の表紙はグラフィックデザイナーの草分けの一人、大橋正氏の絵。「附録・栄養と料理カード(1)」の文字が見える。
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 本号のカードから1色刷りの厚紙になり、切り取って台所に置き、見ながら作るのに使いやすくなった。口絵グラビア「夏の天ぷら」はカードと連動しており、盛りつけや材料、つけだし(天つゆ)とおろし大根の供し方までを写真で紹介している。

 さらに本文に「栄養と料理カード解説」2ページを設け、カードの趣旨を説明し、天ぷらが応用自在に作れるように、最もよい手順、材料、準備、つけだし、衣(ころも)、油の温度、揚げ加減、ぜひ揃えたい天ぷら器具(中華なべ、油きり、網しゃくし、濾し器、揚げ箸)も写真と価格入りで紹介する、いわば天ぷら百科。今となっては懐かしい調理器具が並ぶ。油こし器は近年見かけなくなった。

 材料は1人分で魚50g、野菜100gが目安。手順は、(1)たねの準備(素材の下ごしらえのこと) → (2)つけだし(天つゆのこと)を作る → (3)大根をおろす → (4)油なべを火にかける → (5)衣の用意 → (6)すぐに揚げ始める、とある。要は揚げたてを供するにはまず段どりだ。

カードの他に、口絵グラビア(右)と、本文2ページで天ぷらの詳細を紹介。
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三保谷智子(みほやともこ)

栄養と料理』元編集長。2011年4月から香川昇三・綾記念展示室勤務。学芸員。

東京都出身。1977年立教大学文学部史学科卒業後、香川栄養専門学校栄養士科(現 香川調理製菓専門学校)へ進学、「栄養士」の資格を取得。その後、1979年女子栄養大学出版部雑誌編集課に入職、約30年『栄養と料理』の編集に携わる。1988年より2011年まで、10年間編集長を務める。途中、同部マーケティング課、書籍編集課に在席。

独立行政法人国立健康・栄養研究所外部評価委員。「食生活ジャーナリストの会」会員、NPO法人「野菜と文化のフォーラム」会員、NPO法人「くらしとバイオプラザ21」理事。現在、『栄養と料理』で連載「レシピの変遷シリーズ」を執筆中。


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