セントジョン美樹氏
2008年グーグル入社。グーグル Japanで広告営業部の営業企画開発を担当。出産、職場復帰を経て、広告営業パートナーシップ戦略企画部へ。統括部長として管理職も6年間経験し、2017年3月に退社。現在はサンフランシスコ在住。フリーランスで日米スタートアップビジネスの支援、日米企業双方のデジタルマーケティング支援などを行う。

「グーグルがもっと小さな会社だったころ、組織のミッションとビジネスの目的といった大きな目標から自分のやるべきことまで、チーム単位でも議論を活発にしていました。ゼロから自分たちが作っていくプロセスがあることに、とても感動しました」

 会社レベル、組織レベル、そして上司、自らのポジションに至るまで、大きなミッションとビジネスの目的が的確に示され共有されていることで、果たすべき自分の役割も明白になる。組織としての大きな目標から紐づけして逆算し、自分、または自分のチームがいつまでに何をすべきかということを、具体的に意識できるのだ。

 また、現在のグーグル行動規範にも明記されている「Don't be Evil(邪悪になるな)」という当時の社是とともに、セクハラ・パワハラは絶対に許されない、多様性を重んじるといった企業文化の基準もクリアだったという。

 成果報酬型の働き方で、そのための評価基準も客観的に分かるよう定められている。あらゆる基準が明確ですっきりしていることが、働きやすさの一因であったとセントジョン氏は振り返る。

トップも個人目標を公開する「OKR」制度

 自分たちの役割や存在意義をいつでも明確に語り、モチベーションを上げるためには、どうすればよいのだろうか。グーグルでは、会社の目標を全社員が共有し、メンバーの1人1人が同じ方向を向いて仕事に取り組むためのOKR(Objectives and Key Results)と呼ばれる仕組みが採用されている。

 OKRとは、四半期決算、つまり3ヵ月ごとに全社員が目標を設定し、公開する仕組みのことだ。日本語にすると「目標と主な結果」とであり、グーグルの人事、パフォーマンス管理の中核の仕組みだ。

 グーグルでは、自分の業務において何を目的とし、どこまで目指すのか、この3カ月で何をするのかということをOKRで1人1人、考え、書くことになっている。共同創業者の1人でありアルファベット社のCEO、ラリー・ペイジ氏もOKRを作り、株主総会などで発表する。もちろん若手社員も、自分自身のOKRを考える。そして、それぞれのOKRを持って上司と面談し、会社や組織の目標と個人の目標との間にズレがないか、目標がその人にとって妥当に設定されているかといったことがすり合わされる。

 3カ月単位でこれを行うことで、上司や周囲とその都度、自分の進んでいる道がずれていないか、ブレていないか、なぜできないのかを確認する。企業の目指す方向性から、組織、マネジメントにとっての優先度や緊急度などが理解でき、トップから自らの所属するポジションまでの流れを一貫してはっきりと意識することができる。