(英エコノミスト誌 2018年6月16日号)

トランプ大統領、金政権の人権侵害を軽視 「他の国々も悪事を働いてきた」

シンガポール・セントーサ島のホテルで握手を交わすドナルド・トランプ米大統領(右)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(2018年6月12日撮影)。(c)AFP/SAUL LOEB〔AFPBB News

米朝首脳会談は、中身に対する演出の勝利だった。そしてトランプ大統領は何の見返りもなしに大きな譲歩をした。

 テレビ中継される派手なショーと考えるなら、視聴者をとらえて放さないパワーがあった。

 リアリティー番組「アプレンティス」のスターが赤じゅうたんの上を大またで堂々と歩き、右手を差し出す。一世一代の「ディール(取引)」をする準備は整っている。

 その手を握るのは金正恩(キム・ジョンウン)氏。世界で最も抑圧的な独裁国家の指導者だ。

 身にまとった人民服やヘアスタイル、そして心の中に抱いている不満は1950年代から直接取り入れたもので、つい9カ月前には、「米国の老いぼれの狂人を火で罰してやる」と断言していた。

 結局、火を使うには及ばなかった。核実験の中止と首脳会談への招待だけで事足りたのだ。

 ドナルド・トランプ大統領は金氏に会えて「光栄だ」と言い、金氏は体制の安全の保証を得る代わりに「完全な非核化」を行うことを正式に約束した。トランプ氏は記者会見で、これは「世界史上、非常に重要な瞬間だった」と語った。

 この一件で歴史が何らかの役割を果たしているとしたら、往々にして歴史は繰り返すという意味において、だ。