
大塚礼氏(以下、敬称略) 60歳以上の男女とも、穀類の摂取量が多い人ほど認知機能が低下しやすくなることが分かりました。調査の一例を言うと、1日あたり穀類の摂取量が1単位(108グラム)増えると、男性では1.18倍、女性では1.43倍、認知機能が低下するリスクが高くなることが分かったのです。特に女性では、教育歴など認知機能に強く関連する要因の影響を除いても、穀類摂取量が増えると、認知機能が低下しました。
前篇では牛乳・乳製品の摂取が認知機能低下リスクを抑えるとお話しましたが、牛乳・乳製品のそうしたプラス面の影響より、穀類のマイナス面の影響のほうが強いということも分かりました。
――穀類を材料とする食品にはいろいろありますが、どんな種類の食品が認知機能低下リスクとどのくらい関係するかも分かるのでしょうか?
大塚 はい。NILS-LSAでは、協力者たちに食べたものを網羅的に書いていただくので、穀類の食品でも、どんな種類のものが認知機能低下リスクと関係するかまで分かります。
――どうでしたか?
大塚 解析したところ、特に、うどんや冷や麦など、麺類の摂取量が多い人で認知機能低下リスクが高くなるという関係性が見られました。一方で、コメについては関係は見られませんでした。
――穀類と認知機能低下リスクの関係を調べた結果から、何か他に気づいたことはあったでしょうか?
大塚 はい。データを見ていると、穀類を摂取する方々の中でも、特に「うどんのみ」とか「冷や麦のみ」とか、ほぼ単品しか摂らないような食生活だと、認知機能低下リスクが高まるのではないかと考えるようになりました。そこで今度は、「食事がバラエティに富んでいるかどうか」といった観点で、改めて解析することにしました。