この食事の方法で認知機能低下リスクは4割減少する

科学研究から見る、食と脳・こころ(後篇)

2018.06.15(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要
大塚礼(おおつか・れい)氏。国立長寿医療研究センターNILS-LSA活用研究室室長。博士(医学)。1998年、東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業後、食品メーカーで食品衛生管理者として品質管理に従事。その後、公衆衛生学を志して名古屋大学大学院に進学、2004年、名古屋大学大学院医学系研究科修士課程修了。2007年、同博士課程修了。日本学術振興会特別研究員を経て、2009年、国立長寿医療センター研究所疫学研究部栄養疫学研究室長に。2010年、国立長寿医療研究センター予防栄養研究室長。2013年より現職。

大塚礼氏(以下、敬称略) 60歳以上の男女とも、穀類の摂取量が多い人ほど認知機能が低下しやすくなることが分かりました。調査の一例を言うと、1日あたり穀類の摂取量が1単位(108グラム)増えると、男性では1.18倍、女性では1.43倍、認知機能が低下するリスクが高くなることが分かったのです。特に女性では、教育歴など認知機能に強く関連する要因の影響を除いても、穀類摂取量が増えると、認知機能が低下しました。

 前篇では牛乳・乳製品の摂取が認知機能低下リスクを抑えるとお話しましたが、牛乳・乳製品のそうしたプラス面の影響より、穀類のマイナス面の影響のほうが強いということも分かりました。

――穀類を材料とする食品にはいろいろありますが、どんな種類の食品が認知機能低下リスクとどのくらい関係するかも分かるのでしょうか?

大塚 はい。NILS-LSAでは、協力者たちに食べたものを網羅的に書いていただくので、穀類の食品でも、どんな種類のものが認知機能低下リスクと関係するかまで分かります。

――どうでしたか?

大塚 解析したところ、特に、うどんや冷や麦など、麺類の摂取量が多い人で認知機能低下リスクが高くなるという関係性が見られました。一方で、コメについては関係は見られませんでした。

――穀類と認知機能低下リスクの関係を調べた結果から、何か他に気づいたことはあったでしょうか?

大塚 はい。データを見ていると、穀類を摂取する方々の中でも、特に「うどんのみ」とか「冷や麦のみ」とか、ほぼ単品しか摂らないような食生活だと、認知機能低下リスクが高まるのではないかと考えるようになりました。そこで今度は、「食事がバラエティに富んでいるかどうか」といった観点で、改めて解析することにしました。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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