医師個人への具体的な支払い額を閲覧するには、個別の申請を必要とする。専用のフォームに、申請者自らの氏名や会社名、住所、電話番号といった情報を入力し、申請を行う。

 その後、第一三共での審査を経て、ようやく個別の医師への支払額を確認することができる。もちろん情報は閲覧するのみであり、ダウンロードや印刷はできないように設計されている。

 加えて、医師や施設名の名前、金額といった具体的な情報は、「画像」に加工されており、文字としては認識できない。さらに、検索機能は極めて貧弱であり、目的とする医師の情報にたどり着くには、何十もあるウエブページを一つひとつめくっていくほかない。

 なお、第一三共に限らず、大多数の製薬企業は、C項目の情報公開に対して同様の姿勢で望んでいる。

不適切な公開データを集計し直す

 そのため、一個人が、一つひとつの製薬企業が公開している情報を集計して、自分の主治医と製薬企業との関係の全貌を把握することは実質不可能である。そもそも、前述の但し書きにおいて、そのような行為は、「固く禁じられている」わけだ。

 ワセダクロニクルに出入りする学生さん方は、このように、不親切な形で公開されているデータを、一つひとつ集計可能なデータに直していった。

 ダウンロードができない形式で公開されている場合はスクリーンショットを用いて保存した後、OCR機能を用いて文字に変換した。

 20万件を超える膨大なデータであり、当然正確に文字に変換されない箇所も存在する。そのような誤変換は一つひとつ修正していった。まさに気が遠くなるような作業である。

 学生さんが当時を振り返りながら、辟易しながら語っていた。「最初からもう少し使いやすい形で情報公開をしてくれればいいのに」。まさに、その通りだと思う。何が障壁になっているのだろうか。

 製薬企業の側からしてみれば、彼らが公開しているのは医師の個人情報であり、その使用を制限するのは当然であるという反論がなされるかもしれない。