米国の関税に報復したところで何の得にもならないことは、欧州側も承知している。しかし、ただ服従を強いられるだけでは、失うものが多すぎる。貿易戦争になったら、誰もが貧しくなる。

 そうなった場合に、ドイツ以上に失うものが大きい国はほかにない。

 大西洋をまたぐ同盟関係の崩壊は、ドイツの存在に関わる重大事だ。この国の安全にとってワシントンは欠かすことのできない守護者であり、大戦後の安定を支える2本柱の1つだ。

 北大西洋条約機構(NATO)から、ドイツほど大きな恩恵を享受している国はほかにない。そして米国は開かれた通商システムの保証人として、ドイツの繁栄も助けている。

 トランプ氏が今、見下している、ルールに基づく国際秩序に最も依存しているのがドイツなのだ。

 そのドイツにとって、米国の保護を失うことはそれだけでも大変な衝撃だが、反EUポピュリズムの台頭に示される欧州の政治的・経済的な結束の崩壊は、ドイツの成功の2本目の柱を脅かす。

 冷戦終結時にドイツ再統一を可能にした、必要不可欠な政治的正統性を供与したのはEUだった。そのEUは今でも、ドイツに豊かな域内市場を提供し、その世界的な経済力を支えている。

 左派のポピュリズム政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」によるイタリアの不快な連立政権がユーロ圏に終わりをもたらすことになるかどうかを語るのは、時期尚早だろう。