高齢者こそ脂肪を摂るべき! 認知機能への効果とは

科学研究から見る、食と脳・こころ(前篇)

2018.06.08(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

――どうすれば、血液中のDHA濃度を上げることができるのでしょうか?

大塚 人間はDHAを体でほとんど作ることができないため、基本的には食事で摂り入れることになります。では、どんな食材から摂り入れるかとなると、やはり魚です。卵にもDHAが少し含まれているとされますが、それは鶏の餌に魚粉が入っているからです。

 魚を食べるほど血液中のDHA濃度が高くなり、血液中のDHA濃度が高いと認知機能低下のリスクは低くなるというわけです。

DHAやEPAの抑うつ予防効果も明らかに

大塚礼(おおつか・れい)氏。国立長寿医療研究センターNILS-LSA活用研究室室長。博士(医学)。1998年、東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業後、食品メーカーで食品衛生管理者として品質管理に従事。その後、公衆衛生学を志して名古屋大学大学院に進学、2004年、名古屋大学大学院医学系研究科修士課程修了。2007年、同博士課程修了。日本学術振興会特別研究員を経て、2009年、国立長寿医療センター研究所疫学研究部栄養疫学研究室長に。2010年、国立長寿医療研究センター予防栄養研究室長。2013年より現職。

――DHAについて、精神状態との関係性について分かったこともあるでしょうか?

大塚 はい。食事と抑うつ状態の関係性についても調べました。近年、うつといえば中年期の方々の問題にもなっていますが、調査開始当時は、認知症とともにうつは高齢期に生じやすいものとされていたのです。

――調査結果はどうでしたか?

大塚 40歳以上の方について、DHAの血中濃度が高いと、うつになりにくい傾向があることが分かりました。最も低いグループを基準とすると、DHA濃度が最も高い群では、抑うつ状態のリスクは半分程度に抑えられました。また、同じく魚に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA:EicosaPentaenoic Acid)についても、おおむね同様の結果となりました。

 DHAやEPAを摂取するほど、うつになりにくくなるといえます。

脂肪酸の認知機能への影響は牛乳に含まれる成分でも

――DHAもEPA以外にも、脂肪酸はいろいろあると聞きます。脂肪酸と認知機能の関係性について、他にどのような結果が出ているでしょうか?

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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