たとえば、「約束の時間の5分前には来るようにしよう。ギリギリだとやる気がないと相手に感じさせるから」といった言い方だ。

「なぜ?」の繰り返しは部下を追いつめる

 2つめが「否定語」をつかった叱り方。「お客様のほうを見ていないとダメだよ」といった言い方がこれに当たる。

「否定語で叱られると、否定された悪い行動のイメージが残り、気分もよくありません。肯定語を用い、良い行動を示しましょう。さらに、こういうプラスのことがあるよ、と伝えられるとベストです」(同氏)。

 前述の例であれば、「お客様のほうを見るといいよ。そうすると、何をしてほしいか分かるから」といった言葉に言い換えるとよい、ということになる。

 3つめが、過去の事柄に対する原因を質問する叱り方。「なぜ、ミスしたんだ?」といった叱り方で、さらに否定語を使った「なぜ、やらなかった?」といった言い方も含まれる。

「これは、過去に向けての質問。聞かれたほうは、できなかった事に対しての『言い訳』を考えるしかありません。さらに悪いのは、『なぜ(Why)』を言われたほうは、責任を追及されている気分になることです。繰り返すことで、部下を追いつめてしまうことすらあります」(同氏)。

 そこで代わりとなるのが、『どのようにしたら(How)』などを使って未来形で質問することだという。

「既にしてしまった行動の言い訳を考えさせるより、未来に向かって『自分ができる行動』を考えさせることが、主体性を持った部下育成にもつながります。さらに、その行動を自己宣言させることで、前向きな気持ちにするという効果もあります」(同氏)。

 前述の言い方を改善すると、「なぜミスしたんだ?」は「どのようにしたらミスがなくなると思う?」に、「なぜやらなかった?」は「いつからやる?」といった言葉に言い換えられるということになる。