ある企業では、数か所に設置していたサテライトオフィスをすべて廃止し、1つのビルに機能を集約するという経営判断を下しました。目的はまさに「雑談を生むため」です。

 一昔前は、喫煙所で一服しながら他部署同士の人が雑談をしたり、残業をしている人同士で出前をとったりなんてことが頻繁にありました。しかし時代の変化とともに「業務の効率化」が叫ばれるようになり、雑談を交わす機会はいつの間にか、減ってきました。ところが皮肉にも、雑談の減少とともに、生産性は高まるどころか、低下の一途をたどっていったといいます。そこで、あえて雑談を増やすための方策がとられたのでした。

 生産性の向上とは、決して「ルーティンワークを短期間でやること」ではありません。それは単なる、仕事の「慣れ」。何も考えずにやっていた仕事の効率がよくなったところで、「生産性の向上」とはいいません。

 本当の意味で生産性を上げていくには、「無駄な時間」を減らすことによって「新しい時間」を生み出し、その時間で雑談をしたりじっくり考えたりして、頭の中を耕すことが重要だと私は考えます。

「会議の時間を縮める」「決めない会議をなくす」という物理的な策が、「会議の質を高める」「仕事の質を高める」という「質」の向上につながるのです。

(後編に続く)