日本企業の会議における最もおかしな点は、単なる「報告会議」の数の多さにあります。

 私はコンサルタントという仕事柄、いろいろな企業の会議を見学させていただいています。するとたまに、役職が上の方や社歴の長い方が長々と1時間ほど演説をして、それで解散という、よく分からない会議に出くわします。一般社員はその間、ずーっと宙を見つめ、「無の境地」に入っています。これではいてもいなくても同じです。

 会議終了後、私が「これはいったい、何の会議だったのですか?」と尋ねると、「報告会議です」という答えが返ってきます。1カ月の売上と新製品の動向を報告し、製造部門と営業部門が状況を共有する会議だというのです。

「何月何日のこの時間は○○の報告会議です」と言われて集まり、本当に報告しかしない。「この内容ならば、報告書を読めば済む話だよね」と誰もが思うことのために、何十人もの社員が1カ所に集まってひたすら報告を聞く。まるで修行です。でも、まだまだこういう会社がたくさんあるんです。

 このような「報告会議」こそ、そこに意思決定の機会がない、いわば「決めない会議」です。

 いくら「働き方改革だ」と言っても、このような「決めない会議」を1時間から30分に減らしたところで、何の意味もありません。「決めない会議」そのものを、思い切ってなくす。書面で済む報告は書面で済ませる。これが会議における働き方改革の第一歩なのです。

「決定」のない会議をなくし、「決定」のある会議に時間と労力を投入する。これだけで、生産性は大きく向上します。

前田鎌利(まえだ・かまり)氏 1973年福井県生まれ。東京学芸大学卒業後、光通信に就職。2000年にジェイフォンに転職して以降、ボーダフォン、ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)と17年にわたり移動体通信事業に従事。2010年に孫正義社長(現会長)の後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア第1期生に選考され第1位を獲得。孫社長に直接プレゼンして事業提案を承認されたほか、孫社長のプレゼン資料づくりにも携わる。チーム内会議の改革にも着手し、超高速PDCAを回しながらチームの生産性を倍加させて、次々とプロジェクトを成功させた。2013年12月にソフトバンクを退社、独立。ソフトバンク、ヤフー、大手鉄道会社などのプレゼンテーション講師を歴任するほか、UQコミュニケーションズなどで会議術の研修も実施。著書に『社内プレゼンの資料作成術』『社外プレゼンの資料作成術』(ともにダイヤモンド社)がある。