地政学リスクがもたらす悪い原油高

イラクで代理戦争の恐れ、サウジアラビアの内政には不穏な動き

2018.05.25(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53155
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 ムハンマド皇太子は、「ビジョン2030」とともに「1979年以前の穏健なイスラム教の国を目指す」と内外にアピールしていた。それにもかかわらず、なぜこのような改革に逆行するような動きを阻止しなかったのか。

 不可解なことにムハンマド皇太子は4月21日(夜にリヤド王宮近辺での銃撃事件が発生したとの噂がある)以降、公の場に姿を見せなくなっている(ポンペイオ国務長官のサウジアラビア訪問の際にも姿を現さなかった)。このため、その消息に関する様々な憶測が飛び交っている。「サウジアラビアの一部の王族がクーデターを起こし、銃撃の標的はムハンマド皇太子だった」との情報もある。この事態に慌てたサウジアラビア政府は「プールサイドで野球帽を被りエジプトのシシ大統領と肩を組んでいる」ムハンマド皇太子の写真をネット上に配信したが、その写真の不自然さゆえに逆に「火に油を注ぐ」結果を招いてしまっている(5月23日付ZeroHedge)。真偽のほどは定かではないが、市場関係者がサウジアラビアの地政学リスクに注目するようになれば原油価格の100ドル超えは確実だが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」。

50%を超えた直近1年の原油価格上昇率

 国際商品市場では、原油価格が上昇する一方、銅や亜鉛といった非鉄金属を中心とした工業製品材料の価格が停滞している(5月10日付日本経済新聞)。商品価格は同じ方向に動く傾向が強いが、足元で工業生産活動が鈍っている中で地政学リスクの高まりで原油価格だけが上昇している構図が浮き彫りになっている。

 原油価格が前年比で50%を超えて上昇すると経済に悪影響を与えるようだ(5月15日付ウォールストリートジャーナル)。戦後5回のうち4回(1973年、1980年、1990年、2008年)がそうだったからだが、直近1年間の原油価格の上昇率は既に50%を超えている。

 地政学リスクがもたらす悪い原油高により世界経済に「パーフェクトストーム」が襲来するリスクが高まっている。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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