地政学リスクがもたらす悪い原油高

イラクで代理戦争の恐れ、サウジアラビアの内政には不穏な動き

2018.05.25(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53155
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公の場から姿が消えたムハンマド皇太子

 5月17日に1バレル=80ドルを超えた北海ブレント原油先物価格に関するヘッジファンドの買い越しは、5週連続で減少している。「足元の基礎的諸条件をより強く反映する現物相場が低迷し、先物価格との差が開いており、市場は近く調整に見舞われるのではないか。米国の原油輸出量の日量200万バレル超えが当たり前になった状況下で、市場では需給が既に飽和状態にあり、20ドルの調整があっても驚かない」と危惧する声も聞かれる(5月15日付ロイター)。

 英蘭BPのダドリーCEOも5月18日、「原油価格が1バレル=80ドル以上で維持されることは健全でない」とし、「シェールオイルやOPECの増産で原油価格は1バレル=50~65ドルに下落する」と予測した。

 しかし、地政学リスクの発生が需給関係に反してさらなる原油価格の上昇を招くかもしれない。

 5月12日に投票が行われたイラクの連邦議会選挙で、反イランのイスラム教シーア派指導者のサドル師の政治勢力が最多議席を獲得した。過半数には届かず他のシーア派政治勢力と連立政権の樹立に向けた交渉が行われることになるが、サドル師はサウジアラビアへ接近する動きを示しており、イラクにおいてもサウジアラビアとイランの代理戦争が生じる恐れがある(5月15日付OILPRICE)。

 サウジアラビアでも、イエメンのシーア派反政府武装組織フーシの石油関連施設に対するミサイル攻撃が続いており(5月14日付OILPRICE)、「イエメンからのミサイル攻撃でサウジ側に多数の死者が出れば広範な地域戦争が勃発する」と専門家が警告を発している(5月11日付ロイター)。

 サウジアラビアは内政でも不穏な動きがある。サウジアラビア国営メディアは5月19日、「著名な人権活動家7人が当局に逮捕された」と報じた。サウジアラビアでは女性による自動車運転が6月24日に解禁されるなど女性に対する制約が破られるとの期待が高まっていたが、今回の逮捕について、現地紙は1面で「海外にいる敵対分子の支援を受けた裏切り行為は失敗した」と題する記事を掲載した。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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