地政学リスクがもたらす悪い原油高

イラクで代理戦争の恐れ、サウジアラビアの内政には不穏な動き

2018.05.25(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53155
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 「OPECが6月にも原油生産量の引き上げを決定する可能性がある」と報じられているが、米国産原油の世界市場でのシェアは高まるばかりである。直近の原油輸出量は日量約257万バレルにまで拡大し(イランの輸出量に匹敵)、「今年の輸出量の平均が200万バレルに達する」との指摘もある(5月11日付ブルームバーグ)。

 米国産原油の年初からの増産幅は既に日量120万バレルを超えており、このままのペースを維持すれば、ベネズエラ(日量20万~30万バレルか)やイラン(20万~50万バレルか)の減産を穴埋めすることが十分可能となっている。

懸念されるアジアでの「オイルショック」

 供給面に加え、需要面でも変化の兆しが鮮明になりつつある。

 IEAは5月17日、「大幅な上昇が需要の拡大に影響しないとしたら特異である。原油高の影響は今後数カ月のガソリン需要で特に顕著になるだろう」と指摘した。

 特にアジア地域が深刻である。アジア地域は世界の原油需要の35%以上を占めるが、地域での原油生産量は世界の10%に満たないため、原油価格の上昇に対する抵抗力が弱い。インドやインドネシアなど多くの国が財政難を理由に燃料代に対する補助を大幅に削減したこともあって、ガソリンやディーゼル価格は5年ぶりの高値となっている。

 アジア諸国の今年の原油購入代金は2016年の2倍に近い1兆ドル超になり、アジアで「オイルショック」が起こるとの懸念が広がっている(5月17日付ロイター)。

 原油の最大輸入国である中国の4月の原油輸入量は日量960万バレルと過去最高を更新したが、商業在庫は3月から4月にかけて65%増となっている(5月16日付OILPRICE)。軽油に続きガソリン需要も頭打ちになりつつあるからだ。さらに中国政府の金融引き締め政策の影響で、新興エネルギー企業の雄である中国華信の子会社がデフォルトを起こす事態が発生しており、民営企業の旺盛な原油需要にも陰りが見え始めている。

 原油の最大消費国である米国でも、小売会社や投資家の間で「コスト上昇で消費者が財布のひもを引き締める」として原油高への警戒感がもたげ始めている(5月17日付ロイター)。カリフォルニア州の一部の地域のガソリン価格は1ガロン当たり4ドルを突破した(ガソリン価格の過去最高水準は2008年7月の1ガロン=4.11ドル)。「米国はシェール革命により輸出国の色彩が強くなっており、2008年の時よりもダメージは少ない」との見方があるが、トランプ大統領ご自慢の減税策の効果が台無しになってしまったことは間違いない。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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