事務処理1件あたり2分30秒の時間短縮。1件あたりの導入効果が小さくても、件数が多ければ全体では大きな効果になる。さらに、社内に類似した業務が多数存在していることが考えられ、それにも適用すれば、小さな業務効率化を積み上げて大きな効果を手にできる。

 生命保険会社のコールセンターに寄せられるのは、住所変更だけではない。契約者が亡くなった、解約したいなど多岐にわたる。日本生命は2014年の1年間で、これらを含む4業務をソフトウェアロボットにやらせるようにした。いずれも個々には小粒な業務だが、「年間の処理件数は合計4万~5万件」(金融法人契約部金融法人事務開発Gの大岩根誠専門課長)。単純計算で年間2000時間以上の業務効率化効果が得られた計算だ。

 さらに日本生命は2018年3月末までに、保険証券の再発行や課税控除証明書の再発行などコールセンターで受け付ける業務を中心に、窓販事業の26業務へソフトウェアロボットの適用領域を拡大した。合計20~25人分の事務処理量をソフトウェアロボットが遂行している。別の見方をすれば、3年あまりで合計20~25人分の人材配置や業務教育の負担が軽減したことになる。

業務特化型と複数業務対応型のロボットを使い分け

 日本生命は現在、窓販事業向けに合計6個のソフトウェアロボットを利用している。そのうち4個は窓販26業務のうち、新規契約の登録処理だけを実行する。他の業務に比べ処理量が圧倒的に多いためだ。

 日本生命には日々、窓販を行っている金融機関から新たな新規契約の申込書が届く。届いた申込書は受付担当部署が一括してスキャンし、データ入力担当チームはスキャンした申込書画像を1件ずつパソコン画面に表示しながら契約管理システムにデータを入力していた。

 前述の通り、新規の契約件数は窓販商品だけで多いときに年間7万件にのぼる。入力担当チームが処理する登録件数は、ピーク時には1日あたり2000件に達することもある。これだけの件数におよぶ登録作業の負担軽減を目的に、日本生命は申込書をスキャンした後の事務処理にRPAの適用領域を拡大。スキャンした申込書の画像からOCRでデータを読み取り、それをソフトウェアロボットがシステムに登録する仕組みを整えた。

 同一フォーマットで届く書類のデータ入力は、基本的に同じ作業の繰り返しである。同じ業務をこなすソフトウェアロボットを複製し、複数のソフトウェアロボットに処理を分散させることで、新規契約の登録処理の能力を高められる。大人数で共通の事務処理をする業務の効率化で威力を発揮する、RPAが持つ大きな利点のひとつを生かしている。