2010年暮れにドイツを訪問した。私は30年ほど前に、西ドイツ・デュッセルドルフで3年間を過ごしたことがある。それ以降、何回かドイツは訪れているのだが、行くたびに新たな発見がある。

 かつて先進工業国として世界に君臨したドイツだが、東欧の安価な人件費の国々に追い上げられ、中国製品の嵐のような輸出攻勢にも苦しんでいる。その点では日本と状況は似ている。

 だが、日本よりも条件が悪いのは、東西ドイツの統合による後遺症がいまだに癒えていないことと、EU加盟各国の失政の後始末をせざるを得ないことだろう。

 アイスランド、ギリシャの経済危機問題は記憶に新しいが、他にも「危ない」と」噂される国が複数ある。ドイツはEUの盟主として放っておくわけにはいかないのがつらいところだ。何と言っても通貨が統一されているから、為替変動による調整機構が働かない。

ユーロ安を武器に工作機械業界が元気

 そのような前提で訪問したのだが、思い込みは裏切られた。「百聞は一見に如かず」の思いを新たにした。

 ドイツの製造業各社がなかなか元気が良いのだ。さすがEUの盟主。マイスターの国。

 日本と同じような悩みを抱えつつも、スロベニア、ポーランドなど旧東側地区に大胆に投資を行い、研究開発を怠らず、きちんとしたものづくりをやっていた。

 彼らが元気である原因の1つはユーロ安だろう。かつて1ユーロは180円くらいしていたが、今では、120円そこそこになっている。3割方、価格競争力が上がっている。

 価格競争力を武器に、私の専門分野で言えばDMG(デッケル・マホー・ギルドマイスター)、トルンプ、カールツァイスなど工作機械関連企業が日本でも大攻勢をかけている。

 もともとドイツ製ということで信用がある上、価格が昔の3割引になっているわけだから強力だ。かつてのドイツメーカーは、ドイツ式の「売ってやる」という売り方だったが、最近は「お客様は神様です」とは言わないまでも、日本式に近い、きめ細かいサービスを売りにして業績を伸ばしている。