ヤンゴン市内の橋梁建設の施工監理にあたった日本工営の笠原慶氏

物流のボトルネックを解消

 ミャンマー・ヤンゴン市の北東部を流れるパズンダウン川に、1本の橋が架かっている。市の中心部と、ベッドタウンであるタケタ地区や南ダゴン地区、タンリン地区をつなぐ全長253メートルのタケタ橋だ。

 複数の河川によって分断されているヤンゴン市街地は、現在、15本の橋梁によって周辺地域とつながっており、タケタ橋もその一つ。

 と同時に、この橋は、日本とミャンマーが官民を挙げてヤンゴン市の南東部で開発を進めるティラワSEZと、ヤンゴン市街地やヤンゴン国際空港をつなげる結節点にも位置する交通と物流の要衝だ。

 1日あたり2万9000台が行き交うにもかかわらず、片側1車線ずつしかないため、朝晩は決まって渋滞が発生し、車が数珠つなぎのまま動かなくなる。

 その一方で、建設から50年以上が経過しているため、部材の腐食をはじめ老朽化が深刻だ。

 荷台いっぱいに荷物を積んだトラックが橋を渡り始めるたびに、金属のきしむ音が悲鳴のように辺り一面に響きわたり、欄干にしがみつかないと立っていられないほど前後左右に大きく揺れる。

 2014年6月、そんなタケタ橋の隣に日本の無償資金協力によって新しい橋が架けられることが決まり、翌15年4月から建設工事が始まった。

 片側2車線に拡幅することで物流のボトルネックの解消と効率化を実現するとともに、地域住民にとっての利便性も向上することが期待されている。開通は今年7月だ。

脈々と受け継がれる日本の技術者魂

 「ミャンマー」「橋梁」という単語を聞いて、昔の日本の技術協力を連想する人はどれぐらいいるだろう。

 橋梁技術訓練センタープロジェクト。国土を縦断するエーヤワディー川をはじめ、いくつもの河川が国土を流れるこの国にとって欠かせない長大橋の建設技術を伝えようと、1979年から87年までオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)方式で実施された。

 そうして架けられたツワナ橋の欄干には、今なお日本の協力を示す銘板が残る。