遺伝子組換えイチゴがイヌを歯肉炎から救う

花粉症緩和米に先駆け商品化、医薬応用進む

2018.05.18(Fri) 佐々 義子
筆者プロフィール&コラム概要

(3)イチゴを選んだ

 作物は、最終的にイチゴとジャガイモが候補になったが、熱に弱いインターフェロンを作らせることから、非加熱で利用可能なイチゴが最終候補となった。

 イチゴは、生食・加工食が可能で、ビタミンC、葉酸、キシリトールなどを含むので、今後、機能性食品としての開発も期待できる。また、草丈が低く多段式栽培が可能で、植物工場での栽培に向いている。

(4)動物用インターフェロンαを選んだ

 動物用医薬品は、ヒト医薬品より開発コストは低く、開発期間が短い。加えて、ペットを室内で飼う人が増え、イヌも高齢化しているので市場は大きい。開発当初は競合医薬品がなかったこと、注射薬でないために在宅で使用できること、感染症・慢性疾患に対してインターフェロンαの低用量経口投与が効果的であるなど、多くの選定根拠があった。

 以上のような試行錯誤の末、「拡散防止措置を施した医薬品生産植物工場」において、このイチゴの安定性・再現性のある栽培に必要な照明(照度)、温度、給水、肥料、風速・風量などの環境条件を確立した。きめ細かい制御により年に2回栽培でき、250kgの原薬が安定的に厳しい品質管理のもとで生産されている。

遺伝子組換えの理解促進に期待

 産業技術総合研究所生物プロセス研究部門植物分子工学研究グループ長の松村健氏は「遺伝子組換え植物による物質生産のための植物工場の展開に、この研究が寄与することを期待したい」と言う。

 日本発の遺伝子組換え植物の実用化がなかなか進まない現状において、世界に誇れる植物工場を確立した戦略的なアプローチは、今も多くの示唆を与えており、遺伝子組換え技術全体の理解促進に貢献することも期待される。

 なお、本稿作成にご協力いただいた産業技術総合研究所の松村健氏、ホクサンの田林紀子氏に御礼を申し上げる。

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(さっさ・よしこ) NPO法人 くらしとバイオプラザ21 常務理事。博士(生物科学)。NPOでは、バイオテクノロジーと人々の暮らしを切り口にしたサイエンスコミュニケーションの実践と研究を行っている。ことに「バイオ」に特化したサイエンスカフェ「バイオカフェ」を企画、実施してきた。神奈川工科大学客員教授。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。


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