遺伝子組換えイチゴがイヌを歯肉炎から救う

花粉症緩和米に先駆け商品化、医薬応用進む

2018.05.18(Fri) 佐々 義子
筆者プロフィール&コラム概要

 同研究所はかつて、ラクトフェリンを作る遺伝子組換えイチゴを作出している。ラクトフェリンは牛乳から発見された多機能タンパク質で、ほとんどの哺乳類のミルクに含まれ、免疫力を高める効果がある。このイチゴは製品化には至らなかったが、有効成分を凍結乾燥して果実粉末にする技術がこのとき確立された。

遺伝子組換えイチゴを粉末状にして製剤化する。写真は製剤のイメージ。(写真提供:産業技術総合研究所)

短期間開発はなぜ実現できたのか

「インターベリーα」の製品化においては、技術的な課題だけでなく、規制や国内外の状況なども含む詳細で広範な議論が行われ、極めて厳しい品質管理を可能にする手法が確立された。10年という短期間で遺伝子組換え植物を用いた製品を実現した背景には、戦略的なアプローチがある。以下に、主な4つのポイントを紹介する。

(1)植物を対象とした

 低コスト化、生産拡大性(株数を増やすことでスケールアップができる)、保存安定性(凍結乾燥果実粉末の品質が27カ月間保たれたことが検証された)、安全性(動物由来病原体の混入の恐れがない)などのメリットがある。

(2)閉鎖系を選んだ

 生産目的が医薬品原材料であったため、安定的で、再現性がよく、計画的な生産を可能にするために、植物体の生産(栽培)を完全人工環境下で行う必要があった。そこで、完全人工環境制御型植物工場を新たに開発し、利用することにした。

 また、野外の遺伝子組換え植物の栽培にはさまざまな制約があるが、閉鎖系ならば交雑の心配はなく、非食用の作物に限定されない。こうして「拡散防止措置を施した、医薬品原材料生産用植物工場」が確立された。

産業技術総合研究所が2007年に竣工した、完全密閉型遺伝子組換え植物工場。(写真提供:産業技術総合研究所)
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(さっさ・よしこ) NPO法人 くらしとバイオプラザ21 常務理事。博士(生物科学)。NPOでは、バイオテクノロジーと人々の暮らしを切り口にしたサイエンスコミュニケーションの実践と研究を行っている。ことに「バイオ」に特化したサイエンスカフェ「バイオカフェ」を企画、実施してきた。神奈川工科大学客員教授。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。


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