遺伝子組換えイチゴがイヌを歯肉炎から救う

花粉症緩和米に先駆け商品化、医薬応用進む

2018.05.18(Fri) 佐々 義子
筆者プロフィール&コラム概要

遺伝子組換え米の研究は臨床段階

 日本では、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)で「花粉症緩和米・治療米」の研究が行われている。

 2005年、隔離圃場試験栽培が始まり、生態系に悪影響を及ぼさないかなどの環境影響評価が行われた。今は、ヒトへの安全性評価が行われている。花粉症治療米は、レトルトパック食品での提供が検討されているため、医薬品と食品の区分の問題も含めた安全性や有効性の評価と並行し、審査体制も検討されている。2016〜17年度には、東京慈恵会医科大学と大阪はびきの医療センターで、この米粉末を使った臨床研究が行われた。

 また、東京大学医科学研究所は、腸管で異物の侵入を防ぐ「粘膜免疫」という仕組みに着目し、遺伝子組換え米を用いたコメ型経口ワクチン「MucoRice(ムコライス)」の研究を進めてきた。2017年12月、同研究所はアステラス製薬などとの共同研究で、コレラ、毒素原性大腸菌、ノロウイルスなどのウイルス性腸管下痢症のワクチン開発に続き、治療法がない疾患の治療のニーズを意味する「アンメットメディカルニーズ」への対応を拡大させると発表した。

遺伝子組換えイチゴからイヌ用歯肉炎軽減剤を商品化

 このように、ゲノム情報の解明や育種技術が進んでいるコメを対象とした研究が多い中、産業技術総合研究所は、イチゴを使った動物用医薬品の実用化に世界で初めて成功している。

 2013年、同研究所は総合農薬メーカーのホクサン、北里研究所とともに、遺伝子組換えイチゴの果実が原料のイヌ用歯肉炎軽減剤を開発した。イチゴの中に、イヌのインターフェロンα産生遺伝子を組み込んだもので、これにより、遺伝子組換え植物そのものが有効成分となる動物用医薬品の承認を得た。

 この研究成果は、2014年から、ホクサンよりイヌ用歯肉炎軽減剤「インターベリーα」として発売されている。治療方法は、粉末を水で溶いて、イヌの歯茎に3〜4日間隔で5週間、合計10回にわたり塗り込む。現在はネコへの適用拡大も検討中である。

ホクサンが発売する「インターベリーα」。(写真提供:ホクサン)
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(さっさ・よしこ) NPO法人 くらしとバイオプラザ21 常務理事。博士(生物科学)。NPOでは、バイオテクノロジーと人々の暮らしを切り口にしたサイエンスコミュニケーションの実践と研究を行っている。ことに「バイオ」に特化したサイエンスカフェ「バイオカフェ」を企画、実施してきた。神奈川工科大学客員教授。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。


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