リビアとの交渉にあたって首席担当官を務めたのが、当時の国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)ロバート・ジョセフ氏である。現在、ワシントン地区の安全保障研究機関「公共政策国家研究所」の上級研究員を務めるジョセフ氏は、この5月はじめに刊行された米国の政治外交雑誌「ナショナル・レビュー」にリビア方式についての論文を発表した。

「トランプ大統領は金正恩委員長との首脳会談でリビアの教訓を適用すべきだ」と題されたこの論文の中で、ジョセフ氏は、リビア方式の特徴と、それを教訓とした北朝鮮の非核化の方法を詳述していた。

 ジョセフ氏はまず北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の態度を「微笑外交」と評し、トランプ政権の制裁強化と軍事攻撃の警告におびえた結果の動きであり、核兵器を完全に破棄する決定はいまだに下していない、という見方を示した。

 ジョセフ氏はさらに、金委員長は「段階的非核化」という名の下に米側からの制裁緩和や体制保証、経済援助などを得ようとし、米国と、韓国や日本など同盟諸国との分断も画策しているようだ、と警告を発した。

 そのうえで北朝鮮の非核化はリビア方式に沿う戦略が最善だと主張する。リビア方式は、北朝鮮が求めているとみられる段階的や条件的、あるいは長期的な非核化とはまったく異なっている。同氏は、リビア方式の特徴を以下のようにまとめていた。

・当時のリビアは、現在の北朝鮮よりも核兵器開発は進展していなかったが、完成直前の段階にあった。米国は、リビアの軍事用ウラン濃縮のための遠心分離機やその他の関連機材、さらには長距離ミサイルなどすべてを国外に移した。米国のテネシー州にある軍事研究施設に運び、調査の上、破壊した。