米国のイラン核合意破棄で原油価格は高騰するのか?

不発に終わる可能性が高い「さらなる原油高」のシナリオ

2018.05.11(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53057
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 米国の原油生産量の増加幅は、OPECの減産の基準である2016年10月に比べて既に日量200万バレルを超えている。2018年5月の米国の原油生産量は日量1070万バレルを突破し世界一のロシアに急接近しているが、直近の国内の石油掘削装置(リグ)稼働数も834基となり、2015年3月以来の高水準となった(前年同期のリグ稼働数は703基)。

 原油輸出も好調である。足元の輸出量は日量230万バレルと過去最高となった。米国の財輸出に占める原油・石油製品の割合も9%を超え(実質GDPベース)、21世紀初頭に比べ3倍に迫る勢いである(市岡繁男氏の分析に基づく)。

 前回のシェールオイルブームの最盛期の価格水準には及ばないが、米国南部のパーミアン地域を中心に「単位面積当たりでより多くの原油を抽出できる」技術が確立し、シェール企業の採算水準が1バレル=25ドルにまで下がっていることから、現在の原油価格は当時の100ドル並みの価値があるようだ(5月1日付ロイター)。

 シェール企業の財務状況も大幅に改善している。キャッシュフローが潤沢となったことから、大手のシェール企業は新規油井の開発費用を初めて自社資金で賄えるようになった(4月24日付フィナンシャルタイムズ)。

 このような情勢から米国の原油生産の増加幅が拡大することは必至であり、OPECがさらなる減産努力を行わない限り、世界の原油市場の需給は緩み続けることになる。

今回の制裁で減少しないイランの原油生産

 しかし、市場は「強気」一色と言っても過言ではない。

 ゴールドマンサックスは5月2日、「原油価格は7月に1バレル=82.5ドルに達する。商品への投資は再び安全になっている」との見方を投資家に示した。「2020年に向けて1バレル=100ドルの大台も視野に入ってきている」との予測も出始めている(5月4日付東洋経済オンライン)。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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