常勝チームの監督は、選手に何を伝えているのか?

 今年大学ラグビーで前人未踏の9連覇を成し遂げた帝京大学の岩出雅之監督は、著書の中で次のように述べています。

「応援したくなる人になろうと選手たちにはいつも言っています」

 ラグビーは15人の相互作用で織り成していくスポーツです。

「One for All, All for One」の言葉が示すように、一人ひとりが、周りの選手を生かす、助ける、という意識が高くないと勝てないスポーツです。数人の卓越したプレーヤーだけでは勝つことは決してできません。

「このプレーヤーがこう動いたからこう走り込みボールを受け取る」という「理屈で」はなく、「こいつを生かす! 助ける!」という協力精神が浸透しているチームが勝ちます。

 だから、大事なのは、「応援したくなる人」になること。

 協力したいと思われる人になること。

 そのためには、日頃の過ごし方がとても重要であると、岩出監督は言います。

 例えば、何かしてもらったら「ありがとう」とちゃんと言う。感謝の気持ちを忘れない。15人中15人が、応援したいと思うプレーヤーで、お互いに試合中、とことん応援し合っている。そのチームは間違いなく強いでしょう。

 冒頭の社長は、応援したくなる人であると思います。少なくとも外部の私にはそう見えます。でも彼は、コメントしかしていなかった。協力を要請していないのです。

 こんな会社にしたい、組織にしたい、だから協力してほしい、助けてほしい。

 そう伝えることができれば、周りの役員の遺伝子はうずき始め、「9連覇する組織」に向けて一歩を歩み始めるのではないでしょうか。

【参考資料】
ヒトはなぜ協力するのか
 マイケル・トマセロ (著)、Michael Tomasello(原著)、‎ 橋彌 和秀(翻訳)
協力する種:制度と心の共進化』サミュエル・ボウルズ、‎ ハーバート・ギンタス (著)
‎ 竹澤 正哲、高橋 伸幸、‎大槻 久、‎稲葉美里、‎波多野礼佳 (翻訳)

鈴木義幸
株式会社コーチ・エィ 代表取締役社長
国際コーチ連盟マスター認定コーチ
一般財団法人 生涯学習開発財団認定マスターコーチ

 慶應義塾大学文学部人間関係学科社会学専攻卒業。株式会社マッキャンエリクソン博報堂(現株式会社マッキャンエリクソン)に勤務後、渡米。ミドルテネシー州立大学大学院臨床心理学専攻修士課程を修了。帰国後、有限会社コーチ・トゥエンティワン(のち株式会社化)の設立に携わる。2001年、法人事業部の分社化による株式会社コーチ・エィ設立と同時に、取締役副社長に就任。2007年1月、取締役社長就任。2018年1月より現職。

*本稿は、最新のコーチング情報やリサーチ結果、海外文献の紹介を通じて、業績向上につながる組織改革や人材開発、リーダー開発など、グローバルビジネスを加速させていくヒントを提供するコーチ・エィのエグゼクティブコーチによるコラム「Coach's VIEW」の提供記事です。