人を動かし、組織を動かす大きな一歩

 実は、人は生まれながらに、他者に協力しようとするところがあるようです。

 マックス・プランク進化人類学研究所所長であるマイケル・トマセロ博士の『ヒトはなぜ協力するか』が記しています。

 生後14カ月の幼児が、血縁のない初めて会う大人と対面する。その大人がちょっとした問題に直面していると、幼児はその大人の問題解決を援助する。手がふさがっている時に扉をあけてあげる、手の届かないところにあるものをとってあげるなど。実験では、24人中22人の幼児が援助行為を行った、と。

 幼児は、援助の大切さを教えられる年齢には至っておらず、援助行動を大人に促されたわけでもなく、さらには、その援助行動に対して後で報酬を与えられなくても、「自然に」繰り返し赤の他人の大人を援助するそうです。

「ヒトはヒトを助けるように生まれてくる」と、トマセロ博士は結論付けています。

 経済学者でサンタフェ研究所 行動科学プログラムのディレクターを務めるサミュエル・ボウルズの『協力する種:制度と心の共進化』も伝えています。

 個人的な行動だけで課題をクリアしたときよりも、パートナーと相互協力をして解決したときの方が、報酬を感じる脳の線状体という部位の活動は高まる、と。

 つまり、ヒトはヒトに協力したい種で、そのことで喜びを感じるようにできている。

 であるならば、人を動かし、組織を動かすためには、まず何よりもストレートに協力を求めることが大事ではないかと思うのです。

 ひとりの人間として、私はあなたの協力を求めている。だから、手を貸してほしいと。