(変わってない)常識その4:遺伝子のほとんどは正体不明

 このように急速に理解が進んできた分子生物学ですが、まだ分かっていないことがたくさんあります。ヒトも他の生物種も、遺伝子のほとんどは未解明だということは、どこかでお聞きになったかもしれません。残念なことに、今でもその状況は変わっていません。

 人類は膨大なゲノム配列データを手に入れつつあるわけですが、その暗号文がどんなタンパク質分子を記述しているのかは、まだほとんど判明していません。2万〜2万5000種のタンパク質は、それぞれどんな機能を持ち、どんな場面で役立つのでしょうか。それが分からないうちは、読めない言語で書かれた文書をコレクションしているようなものです。

 しかし21世紀中に、この状況は劇的に改善されると予想されます。この分野の研究が極めて大きな成果をもたらすことは確実です。莫大な努力がそのために注ぎ込まれています。

 ヒトや他の生物種の遺伝子の機能が解明されれば、難病の治療法や老化の予防法が見つかるかもしれません。医療の夢は広がります。

 生物の作るタンパク質分子や酵素は、工業や農業に利用できます。未解明の遺伝子の中には、新素材や新薬を作るものがあるかもしれません。廃棄物や有害物質を分解するものが発見を待っているかもしれません。

 この産業革命はまさしく進行中です。物理の世紀は終わりました。

 大急ぎで子供に分子生物学を習わせましょう。