しかし現在では、生物集団のゲノム配列を解析することで、どのSNPが集団内にどんな速さで広まりつつあるのか、どのSNPがどれほどの速さで割合を少なくしつつあるのか、判定できるのです。つまり、進化を観測し、測定できるのです。

 あるSNPの進化を測定するには、そのSNPが集団に占める割合を単純に測定するだけでは駄目で、ゲノム上の他の箇所のSNPとの相関を調べるなどの高度な解析テクニックが必要です。

 そういう解析テクニックのひとつは、2016年に提案された「シングルトン・デンシティ・スコア」というものです。今後、こうした高度な解析テクニックは増えていくでしょう。

日本列島人集団の適応進化

 先日2018年4月24日、理化学研究所などのグループは、「全ゲノムシークエンス解析で日本人の適応進化を解明」したと発表しました。この研究は、日本列島人集団を研究対象にした点、シングルトン・デンシティ・スコアなどの新しい解析テクニックを用いた点、それによって約100世代(2000〜3000年)という人類の歴史の中では比較的最近のSNPの変化を検出した点などに新味があります。

 進化が検出された遺伝子領域は、「ADH1B遺伝子」「MHC領域」「ALDH2遺伝子」「SERHL2遺伝子」の4箇所です。

 ADH1B遺伝子は、アルコールを代謝するタンパク質分子「アルコール脱水素酵素」を作る遺伝子です。効率のよいADH1B遺伝子を持つ個体は酒に強いといえます。

 アルコールは代謝されると「アセトアルデヒド」という物質に変わります。アセトアルデヒドは毒で、頭痛や吐気といった症状を引き起こします。つまりこれが二日酔いの原因です。このアセトアルデヒドをさらに代謝する「アセトアルデヒド脱水素酵素」を作るのがALDH2遺伝子です。効率のよいALDH2遺伝子を持つ個体は、二日酔いになりにくく、やはり酒に強いといえます。