新常識その1:ゲノム配列データはすごい勢いで成長中

 ゲノム配列を読み取る技術を手に入れたら、これでどんどんゲノムを読み取りたくなるのが人間というものです。アリが好きな研究者はアリを捕まえてはすりつぶして読み取り装置にかけ、山芋が好きな研究者は山芋をすっては読み取り装置にかけ、化石人骨が好きな研究者はネアンデルタール人の骨や歯を削っては読み取り装置にかけ、食中毒菌が好きな保健所の人は患者の排泄物を読み取り装置にかけ、犯罪者が好きなお巡りさんは犯行現場に残された痕跡を読み取り装置にかけ、そういう調子で世界中であらゆる生物のゲノム配列データがすごい勢いで成長中です(が、最後のデータは研究用には公開されていません)。

 生物種の中でも、特にヒトのゲノム配列は、大変熱心にコレクションされています。日本列島人のデータだけでも約20万人分以上あります。さらに、英国では50万人規模のバイオバンクの構築が、米国では100万人規模のイニシアチブが開始されています。

新常識その2:現在進行中の進化が観測・測定されている

 ゲノムは、生物個体ごとに微妙に違います。例えば、ある箇所にAという文字(塩基)が書かれているゲノムを持つ個体と、そこにCと書かれているゲノムを持つ個体が集団内にいたりします。

 このように、ある1塩基が異なるゲノムが集団内に混じっている現象を、「一塩基多型(single nucleotide polymorphism)」と言います。「SNP」と書いて「スニップ」とカッコよく読みます。

 SNPは、製造されるタンパク質分子に違いをもたらし、個体の「形質」を変える場合があります。一方、形質に影響しない、サイレントなSNPもあります。

 形質を変えて、生存率や繁殖率を上げるような有利なSNPは、子孫に伝わる確率が高く、集団内に広まる傾向があります。一方、不利なSNPは、集団に占める割合が徐々に少なくなる傾向があります。これは「適応進化」です。

 みなさんの中には、学校で、「進化は長期間かかるもので、進化の進行を観測することはできない」と教わった方がいるかもしれません。筆者もそう教育されました。