なぜ食べるのか? 生命の根源に迫る深淵なる疑問

考究:食と身体(1)主神ジュピター篇

2018.04.27(Fri) 大平 万里
筆者プロフィール&コラム概要

 消化器官での「消化」は「消化酵素」によって行われている。私たちは、口から食べた動植物を自らの糧とするために、進化の過程でさまざまな食物を消化する消化酵素を獲得してきた。ジュピターは第二の武器として、万物を切り刻む魔法の刃「アダマスの鎌」を持っている。消化酵素は、まさに食物の分解に特化した「アダマスの鎌」のようなものだ。つまり、ヒトの身体ではこのような消化の過程も「食と身体」のひとつの要素であると言える。

 そうなると、「なぜ食べるのか?」と言う問いに「食べ物を消化するため」という答えもあり得ることになる。こうしてみると、細胞レベルだけで考えればよかったバクテリアに比べると、ヒトの「食」はかなり様子の違うことが分かる。

 実際、消化のことだけでなく、私たちの身体には「食べる」ということに関して、バクテリアにはない多種多様な機能が備わっている。主神ジュピターは、そのオリンポス12神のうち半分以上を生みだした神でもある。私たちの身体も、オリンポス12神に例えられるような食に関するさまざまな器官やシステムが、高度に発達している。

 たとえば食欲。食欲がなければ、私たちは食物を口にすることはない。味覚・嗅覚は、どんな食物が身体に危険かを識別するセンサーでもある。免疫システムは、何を体内に入れていいかを判別する重要な働きがある。体内に吸収された物質は、肝臓や腎臓で臨機応変に選別される。

 ヒトの「食」は、単純に細胞のことだけを考えればいいというものではない。「なぜ食べるのか」は「いかにして食べているのか」と問いなおして、総合的に考えてゆく必要があるのだ。

 というわけで、次回から「いかにして食べているのか」の内容について書いてゆく。「なぜ食べるのか」の答えは当面は保留にしておこう。

(第2回へつづく)

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1964年東京生まれ。生物・化学系ライター。熊本大学理学部生物学科卒業。北海道大学理学研究科博士課程修了。博士(理学)。旧工業技術院(現・産総研)、秋田県立農業短大附属属研究所などの流動研究員、高校教諭等を経て現在に至る。最近はその辺に転がる岩石の来歴が気になってしょうがない。


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