大手町の変化は大規模再開発だけではない。高度経済成長期に建てられたビルがレトロモダンに保存・活用される例もある。

 再開発ラッシュが続くなか、低層、横長のレトロな姿を残しながら、改修・保存されることになったのが、三菱地所が長年本社として使用してきた大手町ビルヂングだ。

 築60年で、かつて東洋一の規模と言われた本ビルは、耐震調査で骨格の耐用年数が40年近く残っていたことが判断の決め手となった。今後補修工事を加え、あと100年使える建物にするという。

 既存のオフィスを活用しながらも一部リノベーションを加え、中小のベンチャー起業家が集まるオフィス拠点「FINOLAB」を設置するなど、着々と進化を続けている。

大手企業の本社機能移転も進む

 大手町の大規模開発に合わせて、複数の大手企業が本社の移転計画を進めている。

 三菱地所リアルエステートサービスは、今年5月にコンビニエンスストアやカフェ、フィットネスクラブ等が充実した「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」に本社を移転する。

 「REAL BREAKTHROUGH」を実現する新オフィスでは、従来の4フロアを1フロアに集約。執務室内の壁をなくした機能的なレイアウト、フリーアドレス導入、3つのラウンジの設置によって、社員同士のコミュニケーションを活性化を図る。部門を越えたソリューション、ワークライフバランスの実現を目指すという。2018年5月移転する。

OH-1計画:三井物産本店移転

 三井物産ビル、大手町一丁目三井ビルディング、大手町パルビルの跡地には2棟のオフィスビルを中心とする大規模複合施設を建設する。オフィスに加え、店舗、ビジネスとエンターテイメント両方に対応した多目的ホールや、国内最高級クラスの「フォーシーズンズホテル」も出店する。

 従来、「かるがも広場」として親しまれていたエリアを中心に、約6000m2の皇居の緑地と連なる自然豊かな空間を実現する。三井物産本店は2020年2月の竣工後に移転予定だ。

皇居東御苑入口から見る建築途中のOH-1計画(2018年4月撮影)

大手町1-4-2計画:丸紅本社ビル建て替え

 新丸紅本社は、最先端の機能を持つオフィスに加え、貸会議室、ホール、ギャラリー、レストラン、カフェ等、地域に開かれた施設を併設。地下鉄竹橋駅とのバリアフリーネットワークも構築する。皇居の緑を望める大手町駅前広場も整備する。2020年10月竣工予定だ。

 日本一の高層ビルをはじめ、国際ビジネスセンター、防災、環境、働きやすさが最大限に考慮されたオフィス、自然あふれる広場の整備など、先進的で魅力的な街として進化し続けている。自社の所在地をどのエリアにするかは、企業価値を決定づける重要な要素だ。アクセスの良さは言うまでもなく、首都の顔としての格の高さにも、オフィスを構える価値を見出せるだろう。