森林の“厄介者”が生み出した新たな食材ビジネス

美味しいタケノコと悩ましきタケ(後篇)

2018.04.20(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

 上川さんは、かつて家で作っていたのとほぼ同様の方法で「乾タケノコ」を作り、愛媛県森林組合連合会に送りつけた。同組合の計らいで、乾タケノコはメンマ製造業のミクロ(山形県天童市)に出荷されるようになった。だが、2011年の東日本大震災後は原発事故の風評被害だろうか、出荷されない状況にもなった。

「それでも組合にはしつこく送りつけたんです。売れなかったら捨ててもいいよ、と。そのうち何かの形でヒットするのではないかと思っていました」(上川さん)

「餃子の王将」が国産メンマ向けに採用

 転機は2015年に訪れた。「餃子の王将」を展開する王将フードサービスが、食材の国産化に取り組んでいるという情報を新聞で知った。

愛媛県産の乾タケノコ。左写真の中心部分は「餃子の王将」のメンマにも採用されている。(写真提供:愛媛県森林組合連合会)

 大洲市の故・清水裕市長や地元県議との歓談の席でもその話になり、後日、愛媛県森林組合連合会、商社、ミクロのルートで乾タケノコが王将側に渡った。すると、王将の渡辺直人社長から「お会いしたい」と面会を求められ、市長や上川さんが会うことになった。清水市長と渡辺社長の出身高校がたまたま同じという縁もあり話がはずみ、愛媛県の乾タケノコがメンマ用の食材に採用される運びになったという。「運もよかったなと思います」と上川さんは言う。

 2015年から、王将のメンマに愛媛県産の乾タケノコが使われだした。求められる生産量も増えていった。現在は、森林組合が愛媛県乾たけのこ生産拡大連絡協議会の事務局を務め、県や各市町村が補助などの形でも支援し、さらにJAも協力している。いわば「オール愛媛」体制で乾タケノコ産業を育てようとしているわけだ。

給食、お菓子・・・用途拡大の可能性も

「険しいヤブに入って持ち帰ったり、奥さんたちが湯がいて乾燥させたりする作業はちょっと大変ですが、それでも作るのは簡単ですよ」と上川さんは言う。竹林に生えている2mほどのタケノコを切り、ゴミになる皮を剥ぎ取る。そして里に持ち帰り、節などの硬い部分を除きながらカットしていく。鍋で湯がいて水洗いし、エビラとよばれる置き棚に並べ、乾燥機で乾かして完成させる。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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