歯科受診した1万1000人にHIV感染の恐れ、豪シドニー

台の上に並べられた歯科器具。仏リヨンの歯科医院にて(資料写真)。(c)AFP/PHILIPPE MERLE〔AFPBB News

 とある技術が確立して40年。その技術に学生時代から20年近くの情熱を注いできた研究者が一念発起して、医療機器での実用化を目的に、2016年に起業した。

 東大柏ベンチャープラザ(千葉県)に入居するインテリジェント・サーフェスというバイオベンチャーで、切通義弘(きりとおし・よしひろ、50歳)さんが社長を務める。

歯列矯正中の口腔内での細菌増殖を抑制

 現在、インテリジェント・サーフェスが開発しているのは、歯列矯正用器材のコーティング材である。

 歯列矯正用器材の矯正ワイヤーは、歯を目的の方向に動かすよう“滑り”を維持することが重要なのだが、表面に食べかすなどが付着して歯石ができると、固着してしまう。

 さらに表面に細菌が繁殖して虫歯や歯槽膿漏の原因を誘発すると言われる。患者だけではなく、歯科矯正医や医療機器メーカーも解決策を探しており、同社に共同開発が持ちかけられた。

 こうした医療機器の表面をコーティングする材料として、人の体内に存在し、細胞などを包む生体膜を構成する主成分であるリン脂質の働きを模倣したMPCポリマーには長年熱い視線が注がれている。

 MPCポリマーで医療機器表面を覆えば、体内に埋め込まれる医療機器を生体が自己として認識するため、異物として捉えず生体反応を起こしにくいという特性がある。

 この場合の生体反応とは、異物と生体が接触することによって起きる不具合の総称である。

 例えば、人工血管の内壁に血液が触れると、そこにタンパク質が吸着し、血液成分がこびりついて血栓が生じる。血栓を形成しにくい健康な血管の内側のように、人工血管をMPCポリマーでコーティングすることで、生体反応を防ぐというわけだ。

 切通さんらは独自の技術でMPCポリマーを開発しており、医療機器メーカーと大学との連携で実施した6か月間の臨床試験では、期待通りの結果が得られた。