リーダーシップの重視がエスカレートし、米国の有力大学に進学するためにはリーダーシップを示すために高校時代に何が何でもリーダーにならないといけない、というリーダーシップの自己目的化という現象が起きています。ところが、実世界ではガンジーやネルソン・マンデラは大義の実現のためにリーダーになった人たちですし、起業家の多くも世の中を変えたいという強い思いでリーダーになった人たちで、リーダーになりたいからリーダーになった人たちはほとんどいません。そのため、フォロワーシップや、科学やアートなど基本的に1人でやる活動も大事にすべきだ、という批判が一部から出てきているというわけです。

 ちなみに念のため補足しておくと、日本は米国と事情が違います。最近増えてきた日本の大学の推薦入学の制度では、米国のこうした最新の反省を受けてか、リーダーシップを重視する一方、研究や論文も重視するなど、焦点がいくつもあり、なんとなく乱視気味になっているケースが散見されます。しかし、これまで日本の大学では、そもそもリーダーシップを入試で問うことがほとんどありませんでした。これまでひとりで行う活動(受験勉強)だけが評価されていたわけですから、推薦入試ではリーダーシップを前面に出してもいいのではないでしょうか。

企業が実際に採用面接で重視しているのは?

 MBAのプログラムでは必ずリーダーシップのコースがあり、ケーススタディや、テクニック、良いリーダーになるための戦略、等について教わります。しかし、そうしたコースを履修したからリーダーシップを得られるわけではありません。

 テキサス大学のMBAプログラムで最近行ったサーベイでは、卒業生の82%が自分にリーダーシップがあると評価しているのに対し、採用担当者は同じ調査対象の卒業生の57%しかリーダーシップがあると評価していませんでした。その差は、他の評価項目と比べてダントツに大きかったということです。企業の採用担当は、リーダーシップとは授業で教わるようなものではなく、何かを追求し達成する中で結果として獲得されるものだと見ているわけです。