真実の愛がなくても私たちは生きてゆける
けれどあなたが知らずにきた“無償の愛”を理解しなければ
人生の本当の意味を知らぬまま生きることになるの・・・

Best Of Bacharach Live
トレインチャ・オーステルハウス

 これは音の巨匠バート・バカラックBurt Bacharachと、バカラックの相棒で作詞家のハル・デヴィッドHal Davidの名コンビが生み出した楽曲「アルフィー」の歌詞の一部だが、この言葉に「愛」というエネルギーの本質が要約されているように思う。つまり見返りを求めない愛とは何かを学ぶことこそが、人間にとって最も大切なことなのだと。いつの時代も歌は人の心(魂)を形にしたものだ。長い歴史の中で人々が繰り返し音楽に乗せて伝承するメッセージとは「真実の愛」を知れということなのだ。

 この曲はぜひ壮大なオーケストラサウンドをバックに歌うオランダ出身のマルチシンガー、トレインチャ・オーステルハウスTrijntje Oosterhuisのライヴヴァージョンで聴いていただきたい。トレインチャの丁寧かつ伸びやかな歌声は、この歌詞を味わうのに最適だ。

※「Alfie」全訳はこちら

What A Wonderful World ルイ・アームストロング

この素晴らしき世界
ルイ・アームストロング

 ジャズにあまり馴染みがなくともここで紹介する「この素晴らしき世界」をご存知の方は多いだろう。この歌を印象付けているのは、何と言ってもルイ・アームストロングLouis Armstrongのあの“ダミ声”だ。お世辞にも美声とは言い難い“サッチモ(ルイの愛称)”の歌声には中毒性がある。際立つその声に、トランペット奏者でもあるからこそのセンスの良い歌い回しと人情味溢れる笑顔が加わると、他のジャズボーカルでは味わえない病みつきなものになる。そんな比類ないジャズの父、サッチモがこの歌を通じて後世へ贈るメッセージは、普遍の幸せだ。

緑鮮やかな木々や赤いバラ
私たちを楽しませてくれるその自然の輝きを眺めながら
私は心の中でこう思う
なんて素晴らしい世界なのだろうと

 自然を慈しむことで得られる幸福感は絶大だ。何も特別な場所へ出向かなくとも身近に心の安らぎは存在する。つまり普通の暮らしの中にある小さな幸せを感じられることこそが、真の幸せだと歌詞は伝えている。

赤ん坊の泣き声を聞きながらその成長を見守る
彼らはこれから多くのことを学ぶだろう
私が知っていることよりももっと多くのことを・・・

「子に過ぎたる宝なし」の古諺のように、どの子も皆、何にも勝る宝であり私たちの未来であることを後半部分で謳っている。心の琴線に触れるこういった素晴らしい歌詞に出会うたびに、ジャズはぜひ歌詞を味わいながら聴いてほしいと願う。世界中で長きにわたり愛されるジャズボーカルの歌には、移りゆく人生の指針と、平穏に暮らすためのヒントが隠されている。

※「What A Wonderful World」全訳はこちら

 さて2回に分けてお届けした「人生をリセットしたいときに聴くジャズ」、いかがだっただろうか。ジャズは歌詞を知ることで100倍楽しくなる。紹介したいジャズボーカル曲はまだまだ山のようにあるが、ぜひこれから始まる新たな人生の中で、小粋なスウィングになぞられた癒しの言葉たちに耳を傾けてほしい。愛と喜びと楽しさが詰まったジャズの歌詞たちに。