On A Clear Day ニューヨーク・ヴォイセス

 筆者は訳詞家であり自身もジャズを歌うため、これまで数々のジャズボーカルの名盤を聴いてきたが、インストジャズ(歌の入らない楽器だけのジャズ演奏)ももちろん愛聴する。「On A Clear Day(You Can See Forever)」(晴れた日に永遠が見える)と題されるこの曲も、ジャズピアニスト、ウィントン・ケリーWynton Kellyの晩年(といってもケリーは39歳で他界してしまったが)のアルバム『Full View』で覚えた。ケリーのご機嫌なピアノ演奏で楽しんでしばらくしてから歌詞があることを知ったわけだが、その歌詞を読んで正直、驚いた。

山や海、そして浜辺もみんなあなたの一部
そう感じられたなら、今まで聴いたことのない自然の美しい音色が
あちらこちらから聴こえてくるはず
そして晴れた日に、そのある晴れた日に
あなたは理解することができる
永遠に続く幸せがあることを・・・

A Day Like This
ニューヨーク・ヴォイセス

 前回の冒頭で述べたようにジャズボーカルの歌詞の大半は色事だと認識していたので、それとはかけ離れた内容に、非常に感銘を受けた。人間の持つエゴを取り払い、自分もこの地球に存在する自然物の一つなんだと感じられたときに初めて、物質主義社会では決して味わうことのできない真の至福を体感すると示唆している。こんな高尚で哲学的なことがジャズで歌われていたとは! これはタイトルとメロディだけでは知り得ないことだ。

 そんな素晴らしいメッセージが込められた楽曲のため多くのジャズボーカルが好んで歌っているが、ニューヨーク・ヴォイセスNew York Voicesの洗練されたジャズコーラスサウンドを今回はお薦めする。その名の通りアメリカ・ニューヨークを中心に現役で活躍するコーラスグループで、ソロボーカルでは味わえない珠玉のハーモニーは必聴だ。機会があったらぜひ生の歌声をご堪能あれ。

※「On A Clear Day」全訳はこちら

Alfie トレインチャ・オーステルハウス

 世界大恐慌、二つの世界大戦、アポロ計画、ベトナム戦争・・・。激動のこの100年の中で生まれた名曲たちは、まさにその風雪に耐えながら歌い継がれている。拙訳を掲載しているWebサイトでは、古くは1920年代(大正時代)に書かれた楽曲から、ここ1、2年にリリースされた最新のものまで、1世紀の間にこの地球に誕生したジャズスタンダード曲および洋楽を翻訳してきた。

 訳した数が200曲に手が届きそうな今、不朽の名作たちを通じて分かったことがある。時代や運命に翻弄されながらも、一貫して人々が求めて止まないものは同じということ。それは「愛」だ。