なぜヘッジファンドは原油買いを続けているのか

米国経済にとって真の脅威となる原油価格の下落

2018.04.13(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52834
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 トランプ政権下の米国と強固な同盟関係を築いたかに見えるムハンマド皇太子だが、シェール革命により中東産原油への依存から脱却しつつある米国(「2020年に米国の原油輸入はゼロになる」との予測が出ている)にとって、サウジアラビアの戦略的価値は格段に落ちている(3月19日付ブルームバーグ)。クシュナー氏が政権での影響力を失えばムハンマド皇太子の努力も水の泡になりかねない。

原油価格の高止まりが可能にする錬金術

 ますます高まる気配を見せる地政学リスクだが、これを追い風に「原油買い」を進めているのがヘッジファンドをはじめとする投機筋である。米中貿易摩擦への懸念からその動きは若干鈍っているが、「買い」の水準は依然として過去最高に近い。

「買い」を進めている理由の背景には株価対策があるようだ。金利の上昇などで高原状態への懸念が高まっている株価が引き続き堅調に推移しているのは信用スプレッド(ジャンク債と国債の利回り差)が拡大していないからだとされている。信用スプレッドが拡大しないのはジャンク債の発行条件が良好のままだからだ。専門家によれば、信用スプレッドが拡大しない理由として原油価格が高止まりしていることが挙げられるという。シェール企業がジャンク債の大手発行元であることから「原油価格が高止まりしていれば、シェール企業の収益条件が維持される」との安心感が維持され、通信や金融などを含めた全体のジャンク債市場全体の発行条件が悪化しないというわけである。

 米国株式市場を支える要素として「ジャンク債による自社株買い」があるが、信用スプレッドが拡大しない限り、この錬金術は有効である。だが原油価格が下落すれば、ジャンク債市場が不調になり、株式市場の大きな下落リスクに直結する。そうなれば株式市場の好調さで隠れていた様々なリスク要因が顕在化し、最悪の場合次の金融危機の火種になりかねない。

 筆者はこのような懸念を2015年頃から有しているが、曲がり角に近づきつつある米国経済にとって真の脅威は、貿易戦争ではなく、原油価格の下落なのかもしれない。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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