なぜヘッジファンドは原油買いを続けているのか

米国経済にとって真の脅威となる原油価格の下落

2018.04.13(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52834
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 主要産油国の協調減産がシェールオイルの増産などで打ち消される状況下で、2017年の原油価格の平均が1バレル=50.85ドルだったことを考えれば、原油価格50ドルという数字は現実味がある。現在の60ドル超の原油価格とのギャップは、地政学リスクによるプレミアムであると言っても過言ではない。

周辺国との関係が悪化するサウジアラビア

 地政学リスクについては、先述したシリア紛争よりも、サウジアラビアと周辺国との関係悪化の方が原油市場に与えるインパクトが大きい。

 まず、気になるのはサウジアラビアとイランの対立激化である。サウジアラビアがイランの脅威を煽るのに対しイラン側が比較的冷静に対処してきたことで決定的な対立に至っていないが、5月に米国が核合意を破棄すれば、イラン側も「堪忍袋の緒」が切れる。原油政策を巡っても「協調減産を延長したい」サウジアラビアと「協調減産の早期解除を図りたい」イランの間の溝が深まっており、「6月のOPEC総会は波乱含みとなる」との懸念が生じている(4月4日付OILPRICE)。

 隣のイエメンでは、イスラム教シーア派武装組織フーシとハディ政権の内戦が続いている。4月4日、中東のテレビ局アルアラビーヤは「イエメン西部ホデリダ沖の紅海で航行中のサウジアラビアの原油タンカーがフーシのミサイル攻撃を受けたが、被害は軽微であったことからそのまま航海を続けた」と報じた。その後も「フーシはサウジアラビア南西部のジザンにあるサウジアラムコ社の石油タンクにミサイル攻撃を行ったが、サウジアラビア空軍によりミサイルは破壊された」との報道がなされるなど、フーシによるサウジアラビアの石油関連インフラを対象とした攻撃が脅威となりつつある。

 業を煮やしたサウジアラビア主導の連合軍は、空爆に加えて地上での戦闘を拡大したようだが、4月6日、イエメン北部でフーシの待ち伏せ攻撃に遭い、スーダン兵多数が死亡した(4月8日付時事通信)。スーダンは2015年にサウジアラビアの要請に応じて連合軍に加わり、資金援助国であるサウジアラビアの意向に沿う形で「イエメン国内での地上戦闘」という危険な役目を担ってきた。今回の惨劇でスーダン国内の厭戦気分が高まれば、戦線からの離脱もあるかもしれない。イエメンでの人道危機に対する非難が米国内でも高まっており、米軍は事態の早期収入のために重い腰を上げざるを得ない状況に追い込まれつつある(3月30日付ZeroHedge)。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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