再生可能エネルギーは伸びているが、環境破壊や送電インフラの不足がボトルネックになっている。立地条件のいい地域にはすでに建設されたので、これからは条件が悪くなる。再エネ(水力を除く)の電源構成比は約7%なので、これがいくら伸びてもエネルギー基本計画の掲げる「再エネ比率22~24%」が上限だろう。

 そうすると原子力・再エネを合計した非化石エネルギーの電源構成比は、せいぜい35%。残りは火力だから65%が化石燃料ということになり、これでは2010年とほとんど変わらない。少なくとも原発の稼働を震災前の水準に戻さない限り、CO2の26%削減というパリ協定の目標は不可能なのだ。

「2℃目標」は不可能で望ましくない

 そもそもパリ協定の「産業革命以前より2℃上昇」という目標は実現できるのだろうか。前ページの図でも分かるように、地球の平均気温はほぼ線形に上がっており、CO2排出量の増加率も安定しているので、気温が急上昇するとは考えられないが、タイムラグがあるので今世紀いっぱいは気温上昇が続くだろう。

 今までのペースで気温が上がるとしても、気温上昇を2℃で止めることは不可能だ、というのがテッド・ノードハウスなど多くの専門家の見方である。

 環境保護派は「2℃を超えると異常気象が頻発する」というが、そういう「臨界点」があるという科学的根拠はない、とノードハウスは批判する。あるとしても、3℃かもしれないし1.5℃かもしれない。2℃というのは、達成しやすい目安にすぎないのだ。

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の予想では、今世紀末までの世界平均気温の変化は0.3~4.8℃で、それによって何が起こるかもはっきりしない。動植物が絶滅するとか、伝染病が大流行するという根拠もない。むしろ寒冷地は住みやすくなって、穀物の収穫が増えるだろう。

 確実にいえるのは、海面水位が上がるということだ。IPCCはそれを26~82cmと予想しているが、その程度なら堤防工事で対応できる。地球温暖化はきわめてゆっくり進行するので、日本ではそれほど深刻な問題ではない。

 問題は熱帯の途上国だが、IPCCの予想する程度の生態系の変化は、焼畑などの大規模な環境破壊に比べると大した影響はない。人類が1970年から今まで行なってきた環境破壊だけで4℃以上の気温上昇に匹敵する、とIPCCの統括執筆責任者である杉山大志氏はいう。