米国の外交政策に揺さぶられる原油市場

皇太子外遊中のサウジ、事態がますます深刻化

2018.03.30(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52697
  • 著者プロフィール&コラム概要

 サウジアラビア政府は2018年1月、イエメンの通貨リヤルの暴落が自国通貨の引き下げ圧力につながることを恐れ、イエメン中央銀行への資金協力(20億ドル相当)を約束していた。だが、その資金がいまだに支払われていないことからイエメン中央銀行は資金不足で閉鎖に追い込まれるという異常事態が発生している(3月22日付アルジャジーラ)。2016年に投機筋がサウジアラビア・リヤル「売り」攻勢をかけたが、その再来が近いのかもしれない。サウジアラビアがドルペッグ制廃止を余儀なくされれば、通貨急落から生じる輸入インフレで経済はますます混迷することになる。

 未曾有の経済危機の恐れにもかかわらず暢気に米国での外遊を楽しむムハンマド皇太子は、米TVのインタビューの中で、高まるイランの脅威に対して「国内が戦場になる前に対処する」と述べている。だが、「時既に遅し」かもしれない。サウジアラビアのイエメンへの軍事介入が開始されてから3年となる3月25日、イエメンのイスラム教シーア派武装組織フーシが発射した弾道ミサイル7発が首都リヤドを襲い、軍が迎撃したものの落ちてきた破片に当たりエジプト人1人が死亡した(首都リヤドでの死者発生は初めて)。反転攻勢が強めるフーシはサウジアラビア南部の空港や軍事施設への攻撃も行い(サウジアラムコの石油施設も攻撃対象)、イエメンでの空爆を続けるF15戦闘機を再び撃墜したとの情報もある。フーシ派は26日「イエメンへの空爆が続けるならサウジアラビアへのミサイル攻撃を強化する」と鼻息が荒い。

 国防相でもあるムハンマド皇太子が、米国滞在中にマティス米国防相に対し軍事支援を要請する事態となれば、原油価格が高騰するのは火を見るより明らかである。

5
スマートエネルギー情報局TOPに戻る
PR
PR
PR
バックナンバー一覧 »

POWERED BY

  • ソーシャルメディアの公式アカウントOPEN!
    TwitterFacebookページでも最新記事の情報などを配信していきます。「フォロー」・「いいね」をよろしくお願いします!
Twitter
RSS

 

経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

オリジナル海外コラム

米国、欧州、中国、ロシア、中東など世界の政治経済情勢をリアルに、そして深く伝えるJBpressでしか読めないオリジナルコラム。

>>最新記事一覧へ