私の書いたような子育て本を、男性はほとんど読まないと思います。それで結構です。ただ、この記事を読まれたら、夫婦でよく話し合ってください。子育てはお母さんだけがするものではなく、お父さんになるあなたも一緒になってするもの。一緒に笑顔で楽しむにはどうしたらよいか、あらかじめ思考実験を始めてください。

 念のために付け加えますが、西原理恵子さんの記事にもあるように、育児の大変なところは未来永劫続くわけではなく、いつか終わりが来るものです。首が据わったら少し外出できるし、ハイハイするなら育児支援室、歩けば手を引いて散歩できます。成長すればするほど、子育ては途端に楽になります。そして、とてつもなく育児はオモロイです。

 疲労困憊しやすい、極度の睡眠不足に陥りがちの最初の数カ月間を、受けとめ可能なレベルに疲労を抑える。そのために、徹底して手を抜けるところを抜く。お母さん自身の余裕をどう確保するか、パートナーであるお父さんはそのために何ができるか。夫婦でよく話し合ってください。

子育ての背景への理解を

 そして職場の上司の方、あるいは経営者の方は、上記のことをぜひご理解ください。ある程度ご年配の方の場合、子育ては奥さんに任せっぱなしだったという人も少なくないと思います。だから部下も奥さん一人に任せたらよいのに、甘えているんじゃないか、と思われる方がいるかもしれません。しかし残念ながら、社会状況が大きく変化していることにご注意ください。

 子どもたちがたくさんいた団塊世代、団塊ジュニアなどの時代には、ご近所に子育て家庭が多くいましたし、育児の悩みも相談できれば、助け合うこともよくありました。しかし今ではそうした「有形無形の社会インフラ」は失われて久しいです。なにしろ「隣は何をする人ぞ」なのですから。

 いわゆるワンオペ育児(育児の負担が母親一人になってしまうこと)になりやすい社会状況がある以上、極度の睡眠不足に陥って疲労困憊のお母さんを少しでも助けられるのは、パートナーである男性だけ、というケースも非常に多くなっています。

 私は、子育て世代の長時間労働こそが、児童虐待増加の大きな原因ではないかと考えています。その視点での統計学的調査はまだのようですが、専門家の方はぜひ調べていただきたいところです。母親の極度の不眠、孤独、疲労を放置したままでは、状況の改善しようがありません。お母さんたちが笑顔で育児をする「余裕」を確保するには、社会全体の理解が必要です。

 笑顔で育児ができる社会。それは、次世代を育むのにとても重要な条件だと考えます。その視点での働き方改革をぜひ、社会全体で考えていただけたらと切に願います。