3. 個人の情熱も大切

 もう1つ、日本人のプレゼンとの違いを挙げると、「パッション」の表現の有無がある。自身の手がけるプロジェクトにかける情熱を語るという点である。ストーリーが重視されるとも言えよう。

 アメリカでは、自分がどういう情熱を持ってそれをやっているのか、それをやることによる社会へのインパクト、それによってどのように社会に貢献できるのか、そして、そのために相手にどのように協力してほしいのか――といったことをプレゼンの冒頭に熱く語る。

 もちろん、協力することにより相手にどういうメリットがあるのかという点も忘れない。聞いている側もまた、こうしたことが語られることを求めている。日本では、説明は長々と行っても、個々人の思いなどはほとんど語られないのではないだろうか。発表者は、心の内には熱いものを持っていたとしても、外に出すことはないかもしれない。

 だが、この思いを語ることはとても大切だと伊藤氏は言う。これが語られなくては、アメリカ人は「じゃあ、あなたは何がしたいの? 自分にどうしてほしいの?」と思ってしまうのだ。

 パッションを最初に語ることで、その会議が波に乗る感じがするという。スピーカーたちの熱い思いを傍らで通訳していた伊藤氏にとっても、会議は聞いていて巻き込まれるような「面白さ」と感じるものだという。

どこまで日本の文化にローカライズできるか

 以上、前編・後編を通して外資系企業における会議とプレゼンの特徴をまとめた。そもそも、会議とは何であるかという出発点から違うのかもしれない。そして、意識次第で取り組めることもあれば、話し方や「パッション」など、日本人の感性では簡単にまねできないような点もある。