通訳も熱く巻き込むプレゼンテーション

1. 起承転結はプレゼンに不向き

 伊藤氏の接してきた外国人エグゼクティブたちのプレゼンの大きな特徴に、結論がまず先に来るという点がある。相手の聞きたいことを最初に言っておく。議論がどこへ向かっているのか、ゴールを見据えられることで、相手は安心して話を聞くことができるという。「いいプレゼンかどうかは、はじめの5分間で決まります」と、伊藤氏も自著で述べている。

 日本人なら、話は起承転結でまとめたくなるだろう。だが、起承転結型では話が長くなる。その上、結論が最後まで出てこない。背景説明に始まり、延々と長い前置き。英語スピーカーたちにとっては、この「起」の部分ですでに、不安に陥るのだという。「この話はどこに行き着くのか?」「それで、結局何が言いたいのか?」と。

 だからといって、「順番を入れ替えるだけではない」と伊藤氏は指摘しており、日本人が英語のプレゼンの法則になじむには壁がありそうだ。だが「一定のルールがあって、慣れてしまえば大丈夫。アメリカでは幼少時からこの話し方を教育されているが、日本人は違う。わからないのは当然だ」とも。まずは、起承転結型ではプレゼンが冗長になることを意識して、聞き手が求めている情報を先に出すことを心がけよう。

2. エレベーターピッチに慣れているシリコンバレーのビジネスパーソン

 エレベーターで偶然、投資家と居合わせたチャンスを生かして、そのエレベーター内でのわずか数十秒の間に自社を売り込む「エレベーターピッチ」。

 数十秒から約1分間で行う、シリコンバレー発の超短時間セールストークに、アメリカのビジネスパーソンたちは慣れている。限られた時間内で、自己紹介から、自分の会社、携わっているプロジェクトのこと、問題提起とそのためのアクションプランなどを簡潔に言葉で伝えてしまう。

 効率の良い話し方ができなければ、エレベーターの中で出会った貴重なチャンスをふいにしてしまうことになる。このようなビジネスの中で鍛えられているからこそ、海外スピーカーたちは短時間で効果的なプレゼンをすることにたけているのだ。1分でも無駄にしないという意識の高さ、そのために訓練を積んでいるという点は、大きな差がつくところかもしれない。